ブレア・ウィッチ・プロジェクト (レビュー)

The Blair Witch Project

★★1/2

<1999年アメリカ/80分/ホラー>
製作:グレッグ・ヘイル、ロビン・カウイ
監督・脚本・編集:ダニエル・マイリック、エドゥアルド・サンチェス
撮影:ニール・フレデリクス/音楽:トニー・コーラ

ストーリーのネタばらしはしていませんが、作風のネタばらしはしています。

●よかったのはCMだけ

 この作品は、今、最も話題性の強いホラー映画である。アメリカでもかなりの興行成績を収めているようだが、これは低予算で大当たりを取ったという新しい例である。
 何がよかったのか、というとそれは「CM」の一言で片づいてしまうだろう。女(この女の演技が見事)が暗闇の中、怯えた声で独り言を言うだけのCMだ。しかしそのCMの不可解さといったら言葉に表現できない。「いったい何が起こるのだろう」という気にさせられる。そこがこの映画がヒットしたゆえんだと思える。
 が、下馬評では「本編は期待外れだった」という意見が多かった。
 

●斬新なところはドキュメンタリー性

 この映画で最も話題性の強いところは、文字通りドキュメンタリー・タッチという点だ。ドキュメンタリー風のドラマというひと味変わったアイデアが映画ファンの好奇心をかきたてたのである。
 しかし映画マニアの間では、こういう作風はもはや斬新というよりも、「またか」というような印象が強く、さほど珍しいことではない。かつてウディ・アレンが、「カメレオンマン」という、この手の作品の究極の傑作を残している。
 ただし「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」の場合、登場人物がしだいに不安になっていく様を彼らの目を通して一から十まで順番通りに見せており、いままでの客観的ドキュメンタリー・タッチとは異なる、感情移入型ドキュメンタリーになっているところが興味深い。
 

●見ていて吐きたくなる映像

 見ていて気持ち悪くなるような映像だ。とはいっても、怖い映像がでてくるとかではなく、画面のブレがひどいから、酔って気持ち悪くなるということ。僕も何度吐きそうになったかわからない。この映画は全て素人向けのビデオカメラか16ミリ・フィルムで撮った映像で構成されていて(だから低予算)、普通の35ミリフィルムの映像を完全に省いたという徹底ぶりが、この作品の売りなのかもしれないが、それが逆に不愉快な映像となった。だから80分という短い上映時間も長く感じた。
 でも終わってみると、その不気味な後味のせいか、観客は誰もエンド・クレジットで立とうとはしなかった。
 

●結局はただ観客を脅かそうとあがいていたB級品

 このホラー映画の娯楽性というものは結局なんだったのか。この映画の場合、ストーリーの起承転結がどうとかではなく、その作風とムードに恐怖感を置いている。今までのホラー映画の派手な脅しはまるでない。
 監督が熱意をいれたことは、恐らく、新しいことをやったということだろう。しかし結局、今までのホラーと見せ方が違うという点以外は何の見所もない。どうにかして観客を脅かしてやろうと意気込んで、ようやく作れたという感じだ。やはりこれも、運が良かっただけのアマチュア・ムービーにすぎなかった。
最後に一言:これで1800円はちと高い。

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