クレヨンしんちゃん嵐を呼ぶ!栄光のヤキニクロード (レビュー)

リミテッド・アニメは開拓の余地が大きい
(シンエイ動画・ブランド)
 ほとんどのアニメーターはリミテッド・アニメの呪縛から逃げられず、決まり切った古いルールに則って作品を形にしていく。ゆえに、アニメの世界はまだまだ未開拓な部分が多く、だからこそ、アニメーターたちは自分たちが幸運な環境にいると自覚しなければならい。未開拓だから開拓の余地も大きいわけで、アニメーターが、作品の中で何を試そうが、それは真新しい映像になることは間違いない。
 この映画では、思いがけないカメラワークがところどころで見られる。このシリーズがいつもことごとく面白いのは、リミテッド・アニメという制約の中にいながらも、アニメーターがアニメの未開拓地に踏み込んでいるからだ。アメリカのアニメーション映画は、一般に、ディズニー含め「動くもの」は人間や動物などのキャラクターであり、顔の表情や体のモーションが映像の価値を左右しているが、日本のリミテッド・アニメは、セル画の枚数も限られているため、キャラクターを細かく動かすことができず、そのため「何を」動かすかが決め手となる。「クレヨンしんちゃん」は、キャラクターは極力動いておらず、背景の方がダイナミックに動いている。重要なことは、あくまでリミテッド・アニメの既存の制約に囚われずに、やけっぱちともいえる作風をこの制限下で貫徹したことである。中でも、ヒッチハイクのシーンは賞賛に値する。

オリジナルページを表示する