イノセンス (レビュー)

宮崎駿と押井守。並称される二人の相違点
 海外でも熱狂的な信者の多い押井守の作品で、「キル・ビル」のアニメ・パートを担当したプロダクションI.Gの制作。
 押井と宮崎駿が並び称されるのは、二人とも想像を絶する奇抜な世界を創造する極めて特異な個性を持つフォルマリスト(形式主義者)だからである。宮崎が大きな物をどれだけ視覚化するかにこだわっているのに対し、押井は細部をどれだけ視覚化するかにこだわった。空を飛び、下界を見下ろすことで広大な世界を描き出した宮崎と、瞳の中のディテールまでじっくりと描き込むことでミクロのダイナミズムを描き出した押井。二人は、ジャパニメーションを代表するまったく正反対の位置に君臨することになった。押井の映画は、わかりにくい映画ではあるが、あくまで娯楽志向に徹しており、ひとつひとつの細かいムーヴメントそれ自体が感動と興奮である。小さいところを突き詰めた作品ゆえに、ドラマの意味も小さいところに答えがあり、一度見ただけでは些細なギミックに気づかないかもしれないが、目がついていけないほどのその膨大な情報量は、一回限りの観客にも、おおいに満腹感を与えてくれることだろう。

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