ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ (レビュー)

■意外に丹念な作りで熟練を感じさせる

 友達に薦められて見た映画だけど、こりゃ大した拾いもんだった。プロデューサーのマシュー・ボーンはまだ26歳。監督のガイ・リッチーも20代。しかし若さよりも熟練を感じさせるイカしかブリティッシュ・ムービーである。
 犯罪ドラマの要素と、青春映画の要素と、群像劇(総勢26人)の要素をミックスした野心的な作風だが、それでいて荒削りなところが無く、最後まで練り込まれたシナリオに感心した。
 ところどころでコマ落としやスローモーションなど、特徴的なカメラワークが見られるのが20代の監督ならではの自己アピールと思える。たいてい変にカメラワークを工夫する監督はかえって下手クソな奴が多いのだが、ガイ・リッチーはそのジンクスを破って実に小粋でさりげない映像に仕上げた。
 開巻の登場人物紹介からテンポがよく、どのカットも色遣いから丹念に作られてあるが、これは彼が数十秒の映像に命をかけるCM畑の人間だったからだろう。音楽のセンスも抜群で、登場人物がフレームインしてくるときにBGで短いギターサウンドを流すところが絶妙である。

 

■断片的なようで連続したストーリー

 群像劇としても、これほどよくできている作品に会ったのは久しぶりである。登場人物は皆愉快。「キャラクター映画」というイメージすらある。彼らがすべてひとつの犯罪事件に複雑に絡み合っていくシチュエーション描写が本作の見どころだが、この表現技法は「現金に体を張れ」の影響だろうか? しかし本作は良くできたもので、これだけ複雑に描いておきながら、敢えて時間をバラしていない。時間の流れに逆らわずに各キャラの出来事だけをピックアップして繋げている。だからカットごとにころころとシーンを変えるのは必然だったわけで、主観となる人物が入れ替わり立ち替わり変わっていくのである。忙しいようで、まとめ方は鮮やかだ。一週間の出来事の見せ場だけを凝縮し、あたかも断片的だが、ストーリーはまっすぐに連続している。




1998年/イギリス映画

<製作>
マシュー・ボーン

<監督・脚本>
ガイ・リッチー

<出演>
ジェイソン・フレミング、
デクスター・フレッチャー、
ニック・モーラン、
ジェイソン・ステイサム、
スティーブ・マッキントッシュ、
ヴィニー・ジョーンズ、
P・H・モリアーティ、
スティング

(第94号「レビュー」掲載)

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