21グラム (レビュー)

ナオミ・ワッツの生々しい演技が圧巻
監督:
アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ
出演:
ショーン・ペン
ナオミ・ワッツ
ベニチオ・デル・トロ
シャルロット・ゲンズブール
(2003年アメリカ映画)

 

 いきなり話のど真ん中に投げ込まれ、しだいに全貌が明らかになっていくその手並みは、見事としかいいようがない。登場人物5人の人物関係は前半は全くの不可解で、ショーン・ペンとナオミ・ワッツ、ショーン・ペンとシャルロット・ゲンズブールという矛盾する二組のカップルが並行して登場するため、観客たちはいきなり戸惑うことになる。彼らがどのように出会い、どういうきっかけで関係を持つようになったのか、サスペンスフルに解き明かしていくのだが、ペンの弱り具合がここのポイントで、ワッツと関係しているとき、ペンは元気にタバコを吸っているが、ゲンズブールと一緒にいるときはやつれてひん死状態である。観客は先入観のせいで、ゲンズブールの方が時間的に後に来るシーンだと推測してしまうが、実際はワッツの方が後になっている。観客をあざむく仕掛けと、なるほどと言わせるストーリー・テリング。あらゆるいきさつが巧妙な話術で描写されている。

 ペン、ワッツ、デル・トロのせつせつたる演技はとにかく圧巻で、役者の演技が作品全体をしっかりと支えている。これほど役者主導の映画も珍しいが、とくにナオミ・ワッツの存在感は特筆に値する。彼女が主人公にとって赤の他人であったこと。悩ましげな未亡人であったこと。幾分かタブーじみた刹那(せつな)主義的な愛であること。そして硬くなった乳首。それらが無上のエロチシズムとなる。

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