あの子を探して (レビュー)

他人の不幸を見ておもしろがる心理ドラマ
 行方不明になった生徒を探すため、先生はアドベンチャーに出かける。いつも農村を舞台にするイーモウの映画。これも例外ではないが、ただし後半になると異変が起こる。田舎者の少女が、イーモウの「農村地帯」の殻をやぶって、外に出てしまう。農村映画の監督と思われたイーモウの映画が、ここで我々の住む現実と直面する。少女は現実を目の当たりにして、どうなってしまうのか。これは一種の「ふしぎの国のアリス」である。田舎娘がテレビに出演するシーンなど、この光景にはスリルさえあった。
 世間知らずの人間が、自分の知らない世界に触れて、どのようなリアクションを示すのか。不器用な人間の心理描写は、イーモウの十八番としているところである。いっぱしの先生とは言えない少女が、言うことをきかない生徒達の前で見せるリアクション。少女自身にとっては大変だろうが、観客にとっては、その困っている姿が気の毒ならがも面白い。他人の不幸を見ておもしろがる観客の人間心理の悪をくすぐるイーモウの人間観察日記。

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