グラディエーター (レビュー)

Gladiator

★★★★1/2

<アメリカ/2000年/歴史劇>
製作:ブランコ・ラスティグ/監督:リドリー・スコット
脚本:デビッド・フランゾーニ、ウィリアム・ニコルソン
撮影:ジョン・マシソン/音楽:ハンス・ジマー
出演:ラッセル・クロウ、ホアキン・フェニックス、
オリバー・リード、リチャード・ハリス、コニー・ニールセン

作風をあかしています

●映画らしい映画だということを賞賛すべきだ
 「ベン・ハー」、「スパルタカス」以来の、ローマ帝国を描いたスペクタクルが「グラディエーター」である。この手の歴史劇は、テレビが誕生した頃、テレビの小さい画面に対抗して、量産されていたのだが、やがては陰を潜め、長い間製作されることはなかった。今となっては、受け入れられない企画に入ってしまうのだが、そこに敢えて、巨額の費用を注ぎ込んで作り上げたことに、ブランコ・ラスティグおよびドリームワークス社の野心的・挑戦的ともいえる姿勢を知ることができる。
 結果として、この映画は、こういう大作を知らない観客の好奇心をかき立てさせて、大ヒットを記録した。批評家たちの評価は、賛否両論別れたが、確かに他のスペクタクル大作に比べれば、ストーリー面に弱い所があるかもしれないが、この映画が、冗長なシーンを吹き飛ばすほどの優れた娯楽に溢れた「映画らしい映画」であるということは、何よりも誇示して賞賛すべきだと僕は考える。あの巨大コロシアムを再現してしまった映像の壮観や、時代背景を再現した豪華たるセット・衣裳の数々は、映画だけの視覚的興奮である。
  

●リドリー・スコットのアイデンティティ
 監督は「デュエリスト-決闘者-」「1492 コロンブス」のリドリー・スコットである。アイデンティティを持ったスタイリッシュな演出に人気が高いが、傑作が多い分、失敗作もあるので、僕は正直言うと「グラディエーター」には期待していなかったが、これは見事な面目躍如であった。スコットはこれにより、2000年、最も目覚ましい功績を残した監督の一人になっただろう。
 何と言っても見所は劇中いくつも用意された戦争シーン・決闘シーンである。これらのアクションは、コマ撮り(?)やクロースアップを多様し、ダイナミックに演出しているが、これこそスコット独自の新美学であり、血なまぐさい気迫に満ちた一種のフィルムアートになっている。この気迫は「ブレイブハート」の戦争シーンを凌ぐ程の迫力であり、「アポロンの地獄」の決闘シーンに匹敵する凄まじさである。それこそ映画の中の観客のように我々は熱狂してしまう。
 最初の戦争シーンは動機も前触れもなく始まるが、映像の豪華さ・ダイナミックさに圧倒されるから、素直に楽しめる。だからこの映画は、ストーリーがどうのこうのという以前に、映像だけでも十分に優れた作品であることを認めなければならない。たとえスピーカーが壊れて音が出なくなったとしても、これは間違いなく感動できる映画なのである。
 

最後に一言:巨大スクリーン時代再来

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