バットマン・ビギンズ (レビュー)

身の回りのものすべてを破壊する快感
キャストも全て一新。ティム・バートンが作った「バットマン」なんてどうでもいいじゃないかという前作4作をすべて無視した開き直った世界観が潔い。はっきりいって前作4作は僕はひとつとして面白いと思ったことはないが、今回の作品は良い。「スパイダーマン」のブームに便乗したのか、やたらとシリアスで、ダークな内容だ。ブルース・ウェインがいかにしてバットマンになったのか、映画は「ブルース・ウェイン」という人物像を軸にして描いている。そのため「バットマン」はこの映画にはほとんど登場しない。心理描写を重点に置いており、ひとりひとりの人物描写が生きており、突けば血が噴き出しそうなほどに生命力を感じさせる。
もうひとつ僕が面白いと思ったのは、この映画には悪役という悪役がおらず、町そのものが悪と化しているところだ。今回のバットモービルはそれまでのバットモービルのようにいかにも早そうなシロモノではなく、ゴツゴツとしたいかにも破壊力のありそうなタンクである。町に飛び出したバットマンが、バットモービルに乗って、敵味方、正しいものと悪いものの迷いもなく、自分のまわりにあるものすべて、パトカーからビルの壁まで、次から次へと「町」を踏みつけ、叩き壊し、爆走していくところが最高に気持ちが良い。鬱積している頭の中のもやもやがいっきに解放されるような、そういう破壊の快感を感じさせるカタルシス映画だ。

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