いま、会いにゆきます (レビュー)

ラスト・シーンの後にラスト・シーンがある
★★★★1/2
(2004年日本)

監督: 土井裕泰
原作: 市川拓司(小学館刊)
脚本: 岡田惠和
出演: 竹内結子、中村獅童

 1年前に死んだ妻が突然目の前に現れる。しかし彼女には生前の記憶はない。科学では説明できない出来事だけど、でも現に彼女は今自分の隣にいる・・・。もし自分がこの映画の主人公と同じ立場だったらどうしただろう。とてもイマジネーションを刺激されるSF映画である。

 ありきたりな感想になるが、これを見て、やっぱり恋っていいなあと思った。なんだかとても懐かしい気がする映画だ。きっと誰しも初恋の頃を思い出すだろう。僕の学生時代の初恋の人も、この映画の主人公と同じように、いつも僕の隣の席に座っている子だったが、僕は一言も喋れなかった。思い出すなあ。
 2004年は純愛ブームの年ともいってよかった。それまでは不倫映画や非道徳映画が取り上げられていたが、今度は純愛の時代が到来した。不倫ものと純愛もの、僕はやっぱり純愛ものの方が好きだ。不倫ものは何度でも見たいとは思わないが、純愛ものは何度だって見たい。初恋の記憶というものは、誰の心にも永遠に残るもの。純愛ものを見てキュンとならないわけがない。ちなみに僕が契約している保険のお姉さんは、年に2・3本くらいしか映画をみないというが、彼女がこの映画だけは1日に続けて4回も見たという。それだけ心に響くものがある映画なのだ。

 まず第一に映像が美しいこと。緑の映像がみずみずしい。雨のシーンがほとんどだが、ここまで水を美しく描き上げた映画はそうはなく、雨が好きになるくらいだ。どのシーンも丁寧にゆっくりと撮影していることがうかがえる。ラストのひまわりの映像もまぶしいくらいに美しい。これが愛することの美しさなんだなあと世界の中心で叫びたくなる。だからこの映画は何度でも見たいと思わせるのだろう。
 褒めるべきところはストーリーの見せ方だ。最後になって、日記を読むシーンで全てのことがわかる。この映画は、たとえ最後の日記のシーンがなかったとしても、きちんと結末は描かれているため、十分に感動しうる映画になっているのだが、結末の後に更に本当の結末を付け加えることで、そのストーリーを揺るぎないものにしている。それまでのストーリーとラスト・シーンがちょうど対になっているのだ。日記のシーンまではもやもやとした曖昧な美しさが見どころだったが、日記のシーンからは逆に具体的で、何も謎を残さない。最後の最後で、それまで忘れていたタイトルの意味がやっと理解でき「なるほど」といわせる(タイトルだけでもこんなにハッとさせるとは!)。それまでのシーンが伏線のかたまりだったことを知り、ミステリー映画の結末を見たかのような清々しさまであった。そうした高度なストーリーを、あくまでもムード重視で描いているのだからうまい。ムード重視だから、見終わった後も余韻を残し、じわじわと感動がこみあげてくる。
 テレビ局が関わった映画は駄作になるというジンクスがあるが、これに関しては合格点だ。僕はアメリカ映画ではこのような感動を味わったことがない。これは日本映画にしか出せない様式美だと思う。

オリジナルページを表示する