アメリカン・ビューティー (レビュー)
American Beauty
★★★★1/2
【R指定】
<アメリカ/1999年/122分/コメディ>
製作:ブルース・コーエン、ダン・ジンクス、スタン・ウロドコウスキー
製作・脚本:アラン・ボール/監督:サム・メンデス
撮影:コンラッド・L・ホール/音楽:トーマス・ニューマン
出演:ケビン・スペイシー、アネット・ベニング、ソーラ・バーチ、
アリソン・ジャーニー、ピーター・ギャラガー、ミーナ・スバーリ、
ウェス・ベントリー、クリス・クーパー
注意:かなりネタバレやっちゃってます。
●普通の人々を、ブラックに描いた喜劇
この映画は、ごく普通の家庭を、すごく奇抜に、ブラックなタッチで描いた作品だ。旦那も嫁も子供も、みんな心の中に「ビューティー(美)」を持っているが、そのこだわりは強固。
主人公ケビン・スペイシーは、ごく普通のサラリーマンで、何も楽しみはなく、会社ではリストラの対象になってしまう。家庭内でも、嫁と楽しくない会話。娘にも愛情を拒否され、嫌な毎日。しかし、娘のチアリーダー仲間に一目惚れ。その娘を抱こうと、筋力トレーニングを始め、人生の「ビューティー」を見いだしていく。
一方、嫁のアネット・ベニングは、仕事にハッスルするも、失敗して悔し涙。でも愛人ができて、欲求不満も解消し、ルンルン気分。ところが浮気しているところでもろに旦那と鉢合わせ。ごく身近に起こりうる一大事。
隣人はごく普通の”変わった家庭”。頑固な雷親父とミイラみたいな母と変態息子の3人家族。変態息子は、毎日隣人の娘を撮影し、それに「ビューティー」を見いだす。
それが気に入らないのはロリータ娘。みんなからもてていることを「ビューティー」としていたのに、あの変態には見向きもされないことにご不満。今はセックスしか興味がないませた高校生。
こんなキャラクターが入り乱れて、平凡な生活を描いているようで、妙に珍しい、暗くて明るいブラック・コメディが、「アメリカン・ビューティー」だ。
ちなみに、薔薇の種類にも「アメリカン・ビューティー」というものがあり、妄想の場面では、駄洒落でその薔薇の花びらが印象的に登場する。庭に咲いていた花もこれ。
●映画の基本的な組立を無視
この映画のストーリーは、ユニークな組立方をしている。いい意味で、映画の基本的な構成を無視している。
物語の流れよりも、登場人物の個性溢れる行動に焦点を定め、ユーモラスにディフォルメして描いている。このひとつひとつのエピソードは諷刺マンガのような面白さで、捨てるようなシーンなどない。また、カメラワークの見せる登場人物の配置が、シチュエーションを感覚的に説明しており、秀逸である。それらのシークェンスを連ねることにより、組立上ではごちゃごちゃしているストーリーに、テンポのいい流れを作り出しており、退屈を感じさせない。
出演者一同、迫真の演技である。群像劇のような構成だが、それぞれのキャラクターに共感すべきところを持たせて描いていることは、説得力十分。みんな凡人ゆえに、感情移入しやすいわけだが、その平凡さをいかに変則的に描いているかがこの映画の見所だ。車の中で大声で歌を歌う主人公は、よく考えれば、至ってありふれた行動なのだが、画的にはこれがアブノーマルで、やっぱり笑える。
ケビン・スペイシー、アネット・ベニングは、ごく普通の夫婦役なのに、それをこうもおかしいキャラクターにしてしまうとは、2人のキレまくった演技力にも感服だが、これが初仕事になる舞台出身の新鋭演出家サム・メンデスの今後にも多いに期待が持てそうである。夫婦喧嘩のシーンもやけにリアル。
●マニアックな気配りも発見
この映画は、マニアにはたまらない要素がいっぱい。劇中に、ベンツやフォードなど色んな車が登場するが、車好きな人なら「お!」と思ってしまうようなこだわりである。それと、ケビン・スペイシーがトレーニングしているときに流れる音楽もたまらない。フリーというマニアックなバンドの曲が流れたりする。ラストソング「ビコーズ」(作曲:ジョン・レノン)も、映画のイメージにぴったりで、静かな余韻が残る。
最後に一言:一番印象的なのはオナニー・シーンです
★★★★1/2
【R指定】
<アメリカ/1999年/122分/コメディ>
製作:ブルース・コーエン、ダン・ジンクス、スタン・ウロドコウスキー
製作・脚本:アラン・ボール/監督:サム・メンデス
撮影:コンラッド・L・ホール/音楽:トーマス・ニューマン
出演:ケビン・スペイシー、アネット・ベニング、ソーラ・バーチ、
アリソン・ジャーニー、ピーター・ギャラガー、ミーナ・スバーリ、
ウェス・ベントリー、クリス・クーパー
注意:かなりネタバレやっちゃってます。
●普通の人々を、ブラックに描いた喜劇
この映画は、ごく普通の家庭を、すごく奇抜に、ブラックなタッチで描いた作品だ。旦那も嫁も子供も、みんな心の中に「ビューティー(美)」を持っているが、そのこだわりは強固。
主人公ケビン・スペイシーは、ごく普通のサラリーマンで、何も楽しみはなく、会社ではリストラの対象になってしまう。家庭内でも、嫁と楽しくない会話。娘にも愛情を拒否され、嫌な毎日。しかし、娘のチアリーダー仲間に一目惚れ。その娘を抱こうと、筋力トレーニングを始め、人生の「ビューティー」を見いだしていく。
一方、嫁のアネット・ベニングは、仕事にハッスルするも、失敗して悔し涙。でも愛人ができて、欲求不満も解消し、ルンルン気分。ところが浮気しているところでもろに旦那と鉢合わせ。ごく身近に起こりうる一大事。
隣人はごく普通の”変わった家庭”。頑固な雷親父とミイラみたいな母と変態息子の3人家族。変態息子は、毎日隣人の娘を撮影し、それに「ビューティー」を見いだす。
それが気に入らないのはロリータ娘。みんなからもてていることを「ビューティー」としていたのに、あの変態には見向きもされないことにご不満。今はセックスしか興味がないませた高校生。
こんなキャラクターが入り乱れて、平凡な生活を描いているようで、妙に珍しい、暗くて明るいブラック・コメディが、「アメリカン・ビューティー」だ。
ちなみに、薔薇の種類にも「アメリカン・ビューティー」というものがあり、妄想の場面では、駄洒落でその薔薇の花びらが印象的に登場する。庭に咲いていた花もこれ。
●映画の基本的な組立を無視
この映画のストーリーは、ユニークな組立方をしている。いい意味で、映画の基本的な構成を無視している。
物語の流れよりも、登場人物の個性溢れる行動に焦点を定め、ユーモラスにディフォルメして描いている。このひとつひとつのエピソードは諷刺マンガのような面白さで、捨てるようなシーンなどない。また、カメラワークの見せる登場人物の配置が、シチュエーションを感覚的に説明しており、秀逸である。それらのシークェンスを連ねることにより、組立上ではごちゃごちゃしているストーリーに、テンポのいい流れを作り出しており、退屈を感じさせない。
出演者一同、迫真の演技である。群像劇のような構成だが、それぞれのキャラクターに共感すべきところを持たせて描いていることは、説得力十分。みんな凡人ゆえに、感情移入しやすいわけだが、その平凡さをいかに変則的に描いているかがこの映画の見所だ。車の中で大声で歌を歌う主人公は、よく考えれば、至ってありふれた行動なのだが、画的にはこれがアブノーマルで、やっぱり笑える。
ケビン・スペイシー、アネット・ベニングは、ごく普通の夫婦役なのに、それをこうもおかしいキャラクターにしてしまうとは、2人のキレまくった演技力にも感服だが、これが初仕事になる舞台出身の新鋭演出家サム・メンデスの今後にも多いに期待が持てそうである。夫婦喧嘩のシーンもやけにリアル。
●マニアックな気配りも発見
この映画は、マニアにはたまらない要素がいっぱい。劇中に、ベンツやフォードなど色んな車が登場するが、車好きな人なら「お!」と思ってしまうようなこだわりである。それと、ケビン・スペイシーがトレーニングしているときに流れる音楽もたまらない。フリーというマニアックなバンドの曲が流れたりする。ラストソング「ビコーズ」(作曲:ジョン・レノン)も、映画のイメージにぴったりで、静かな余韻が残る。
最後に一言:一番印象的なのはオナニー・シーンです