ビー・クール (レビュー)

音楽魂ここにあり
 なんだか「ゲット・ショーティ」に似ているなぁと思っていたら、後からこれがその続編だと知った。「ゲット・ショーティ」はあまり良い映画ではなかったので、あれの続編として売り込むと、かえって不利だったのだろう。「ビー・クール」はそれ単体でも独立しており、続編として売り込まなくても十分に通用する内容だ。タランティーノ世代にも訴えるものがあるし、少なくとも「ゲット・ショーティ」よりはずっと面白い。「ビー・クール」は音楽業界をからかったものだが、映画業界をからかった「ゲット・ショーティ」よりも犯罪との絡みがホンモノぽく見えるのが興味深い。愛だの友情だのを美徳としてきた優等生的な映画業界と、ドラッグだのセックスだのを奨励する不良的な音楽業界とでは、事態も違ってくる。ゆえに、表舞台では人気のラッパーが、裏では拳銃を振り回しているところにこの映画のユーモア・センスが光る。
 僕がこれを予想以上に気に入ったのは、たった一人の新人歌手のために業界が大きく逆転することである。どんなに追いつめられようが、一人の新人にすべてを賭けて売り込むのだから感動である。容赦なく銃をぶっ放す男が、一人の新人の歌声を聴いた瞬間に心変わりをする。商売よりも音楽のウェイトが勝つ。これが音楽の魂である。音楽好きの僕はこの展開を見てゴキゲンになった。エアロスミスのマジ出演もありがたい。

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