アイランド (レビュー)

正義を偽るきれいごと
 我がごひいきのマイケル・ベイの新作とあって期待していたが、僕と彼は考え方が違うらしく、今回の作品にはまともに感動できなかった。これは主義主張の違いとでも言おう。アイデアは大変面白いし、世界観もよくできている。そこは僕も認めるのだが、細かいところでツッコミどころは満載である。見るからに暑そうな砂漠の大地に逃げ出した2人の主人公が、酒場に入るなり、なぜ水を飲もうとしないのだろうか? せっかくストーリーに共感していても、基本的な生理現象を無視していることで、僕は一気に白けてしまった。まあこれはフィクションだからその点については許せる範囲だが、こうした不自然な描写も回を重ねていくと、我慢できなくなる。主人公2人がどんなピンチに直面しようが、それを間一髪で切り抜けていくのは、お約束の見せ場とはいえ、イベントのひとつひとつが確かな動機に欠けており、唐突な印象が強く、スリルも半減である。アクション映画でありながらアクションに説得力がなく、ただ派手に見せかけているだけにも見えてくる。
 僕が一番気になったのは、何が正義で、何が悪かという切り分けである。テーマは「生きたい」という人間欲求であるから、テーマに関しては文句なしに描けていると思うが、かなりどろどろしすぎた感もある。この映画では他人を殺してまで、自分が生きようとする。2人の主人公は人造人間だが、生身の人間たちを死なせてまで我が道を行く。それをあたかも正義のことのように美化しているところに正直僕は抵抗を感じた。僕はこの映画ではむしろ悪役に共感したくらいである。しかも、この映画の結末は何の解決にもなっていない。母親を亡くした少女について先に描きながらも、最後には観客に少女の存在を忘れさせているが、僕は決してこの哀れな少女のことを忘れられなかった。

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