アビエイター (レビュー)

ディカプリオが本当に狂ったのかと思った
 これは日本ではあまり受けなかったが、僕は大好きな映画である。最近ちょうどDVDが出たそうなので、ウチでも感想を書かせてもらう。
 これが観客に受けなかったのは、主人公が我々とあまりにも違いすぎる人間だからではないか。僕自身はハワード・ヒューズの生き方にとても共感しているので、長い上映時間でありながらも、かなりぐいぐいと引き込まれたのだが、ハワード・ヒューズの変人ぶりはタダモノではなく、多くの観客が首をかしげる結果となったのではないかと思う。観客というものは、何かしら主人公に同一化することを期待していると思うが、そもそもこれは偉人伝なので、「へえ、こんな変わり者がいたのか」と、客観視しながら見ることが正しい見方かもしれない。主人公の潔癖性ぶりなどとても好奇心をくすぐられるではないか。
 褒め称えるべきはレオナルド・ディカプリオの演技力である。まさかスコセッシとディカプリオというコンビが成立してしまうとは意外だった。僕はこれはディカプリオのそれまでの最高の演技だと思っている。あの若さでこれほどの偉人を演じているだけでも相当なものだが、突然同じ言葉を連呼するシーンでは、僕はこれが映画であることを忘れて、本当にディカプリオ本人が撮影中に狂ってしまったのかと勘違いしてしまったほどである。
 航空映画としても高く評価したい。ケイト・ブランシェットと空中散歩するシーンは作中もっとも優れたシーンであろう。操縦桿を握り、ゆっくりと山を越えていくところで、僕は一瞬本当に空を飛んでいるような浮遊感を感じた。僕は今までかなりの航空映画を見てきたが、どれもこれほどの臨場感を間近に感じたことはなかっただろう。マーティン・スコセッシは以前僕が「生きた空気感」の出せる監督だと紹介したが、まさにこの作品はその宝庫である。各シーンそれぞれに、空気の質量を感じ取ることができるのだ。

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