南極物語 (レビュー)

ハリウッドのレベルの高さを痛感
日本で二十数年前に大ヒットした「南極物語」をモチーフにしたフィクション映画。日本では多数の子供映画に埋もれて興行成績はかんばしくなかったようだ。監督はスピルバーグ系映画のプロデューサーだったフランク・マーシャル。「生きてこそ」以来の作品だが、また極地のサバイバル映画を作ったことに彼なりのこだわりを感じる。
ストーリーのあらかたの流れは日本版になぞっているが、各シーンの見せ方はより洗練されたものになっている。人間が溺れそうになって危機一髪助けるシーンの緊張感といい、主人公とヒロインのささやかな恋愛描写といい、コミックリリーフの配置といい、感動のシーンまでの溜め方といい、正直言って、ハリウッドの映画作りの巧さを痛感した思いである。内容は日本版ほど暗くはなく、大いに映画的な見せ場に彩られている。
僕は見る前から、おそらくアメリカ版には日本版で印象的な説明的なナレーションはなくなると思っていたが、案の定ナレーションは消えていた。アメリカ版は、犬たちをまるで人間の登場人物であるかのように描くことでナレーションで語るべきところは解決している。お互いに励まし、助け合う犬たちの豊かな生の表情は、CG全盛のこのご時世には本当に抱きしめたくなるほど愛くるしく映る。

オリジナルページを表示する