単騎、千里を走る。 (レビュー)

高倉健の高倉健らしさが嬉しくなる
中国では反日の傾向があるが、日本では中国映画が大ブーム。この作品もご多分にもれず、拡大系映画館で上映された。チャン・イーモウにとっては「あの子を探して」のように昔のカラーを思い起こさせる内容になっているが、いよいよこれが拡大系上映とは、チャン・イーモウの名前も大きなものになったものだ。
僕はこれを見て、とにかく嬉しくてたまらなかった。日本一の国際スター高倉健が中国映画に出ているという点でもそれは嬉しいが、久しぶりに僕のイメージしている本来のチャン・イーモウが帰ってきた点でも本当に嬉しい。あの何もない広大な土地をバックにした映像の構図ひとつひとつがとても愛らしく、村の人が総出で食事会をするカット以降からは、もうチャン・イーモウ節が全開。村長さんなどはまさにチャン・イーモウ映画の住人そのまんまの立ち居振る舞いである。高倉健についても、その不器用な役どころを理解しきった描き方で、彼がいつもどおり無言で押し黙っている様を見ているだけでも嬉しくなってくる。高倉健のキャラクター像がチャン・イーモウ映画に溶け込んで起きた化学反応が本作最大の見せ場。高倉健を敬い、高倉健のために作った「高倉健そのもの」の映画になっており、高倉健をモチーフにした映像詩と言うべき傑作。日本人として、高倉健を誇りに思える映画だ。

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