映画ドラえもんのび太の恐竜2006 (レビュー)

今度は1から作るってことで一念発起
★★★★★
(2006年日本)

監督:渡辺歩

大長編ドラえもん特設コーナー

 

 涙なしには見られない予想以上の傑作。声優を総入れ替えし、グラフィックもがらりと一新した新生「ドラえもん」による映画第一弾。一回目ということで、縁起を担いでか、旧「ドラえもん」の中でも最も人気が高く、最初の劇場用作品である「のび太の恐竜」をリニューアルすることになった。もう何もかも好き放題やろうじゃないかと、スタッフたちが思うままに作っているが、その筆致からは傑作を作らんとする熱き意気込みがひしひしと感じとられ、実写映画も含めて今年の日本映画の中ではベスト1と断定できるほどの驚異的力作となっている。原作を読んでいても、まるで初めて見るような感覚で楽しめることだろう。
 昔の小原乃梨子ら声優陣の演技も非常に芸があってそれはそれで面白かったが、大原めぐみら新しい声優たちと交代してからはむしろ格段に良くなっている。以前の声優たちは原作とはかけ離れていたような気がするのだが、今の声優たちはかなり原作のイメージに忠実になったように思える。不思議なことに、僕は今回声が変わったことに関して何も違和感を感じることがなかった。アニメーションの絵もだいぶ原作に近くなっているし、藤子・F・不二雄が短いコマ数の中に見せた構成の妙味に毎回驚かされてきた僕としては、原作の持ち味を生かしている新生ドラえもんに大いに共感する。
 「ドラえもん」のネームバリュー効果があってか、今回の映画化にあたって一流のアニメーターが結集したというが、確かに映像も音響もどこをとっても文句のない内容になっている。驚くのは映像だ。1億年前の雄大な自然の映像は、スクリーンを飛び出すほどに壮観で、ため息が出るほど美しい。1億年前の満天の星空をバックにキャンプするのび太たちの姿を見ていると、あぁいいなぁと嬉しくなってくる。まさかのび太がただタケコプターで空を飛ぶ映像だけで、こんなに胸が熱くなるとは思わなかった。
 フルアニメーションによるキャラクターの動きの流麗さも秀逸。恐竜がのび太になついて首をすりすりするシーンは、絵が動くことの温もりというものを思い出させてくれる。また、巨大恐竜と肉食恐竜が対決するシーンの圧倒的な迫力ときたら! おそらくはディズニーの「ファンタジア」を参考にしていると思うが、かつての大長編「ドラえもん」ではこれほど躍動的なシーンは見られなかったろう。

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