ルイ・ジューヴェ (今週のスター)

 名優ルイ・ジューヴェ。ジャン・ギャバンと並び称される人だが、とはいっても、今の映画ファンにはあまり馴染みのない俳優かもしれない。クラシック映画好きな人は、ジャン・ギャバン派か、ルイ・ジューヴェ派かわかれるものだが(2人には共通点がない)、淀川さんはルイ・ジューヴェ派だったらしく、オーソン・ウェルズやローレンス・オリヴィエと一緒に「好きな俳優」の中にあげている。いかつい俳優がお好きなようだ。
 ルイ・ジューヴェは舞台で有名な俳優だった。自身の劇団を持っていたくらいだから、相当な実力派だったのだろう。残念ながら、かなり昔の俳優なので、資料が少なく、僕も勘でしか書けないが、彼が映画界に進出したときには、ニュースで騒がれたに違いない。
 僕はルイ・ジューヴェはローレンス・オリヴィエと同系統の俳優だと思っている。あまりいっしょくたにするのは良くないが、2人とも演劇から映画に出て、確固たる人気を確立したからだ。2人とも映画にでても依然演劇っぽい演技をしていたが、その顔立ちをスクリーンのアップの映像で見るのはかなりの迫力があった。
 ルイ・ジューヴェの良いところは眼光だとされる。このギョロギョロとしたするどい目つきである。それだけでも存在感は十二分にある。僕は目よりも、眉間の皺にダンディズムを感じる。
 ジャン・ルノワール、ジュリアン・デュヴィヴィエ、ジャック・フェデー、アンリ・ジョルジュ・クルーゾーら、フランスの名匠の作品に出ており、成功に導いている。ジャン・ギャバン同様にデュヴィヴィエ作品で人気が高く、『舞踏会の手帖』(37)、『旅路の果て』(39)などは、映画の人気投票では必ず上位にランクインする名作だ。
 この写真は『犯罪河岸』(47)の警察役だ。最初に登場するとき、パイプをふかしながら、ぶつぶつ悪態をつく感じが、親父臭いのに、何だか妙にかっこよかった。犯人を追い詰めるときの威圧感や、警察とは何たるものかと、半ばキレながら演説するシーンにはしびれるものがあった。
 映画デビューが遅かったのは幸運だった。だからルイ・ジューヴェには気取ったアイドルっぽさがない。大御所ならではの得も知れない貫禄があるのだ。

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