ウォルター・ブレナン (今週のスター)

 記念すべき200人目に大物をもってこないのは僕の嫌らしい性格。今週はウォルター・ブレナンというマニアックな役者を紹介しちゃおう。ブレナンの大ファンという人は、相当なクラシック映画ファンに違いない。リクエストも案外あったしね。

 ブレナンは「脇役」としては世界一偉大な人物。しかし世界一有名でないのは、彼の出演作がすべて脇役だったから。もともとエキストラ出身なので、筋金入りの脇役だ。僕はファミリー映画「小びとの森の物語」(67)でブレナンが準主役(しかも二役)をやっているのを見たことがあるが、おそらく彼の主演作といえる物はこれ一本を数えるのみだろう。しかしそんなことはどうでもいい。何度も言うように、ブレナンは脇役スターなのだから。

 あまり賞のことで褒めたくはないが、アカデミー賞に助演賞部門が開設されてから僅か5年の間に3回も助演男優賞を受賞した快挙はやっぱり凄い。ブレナンは40年代にかけては、トマス・ミッチェルと並び、もっとも傑作に恵まれた脇役俳優だったと思う。憎めない悪役ロイ・ビーンを演じた「西部の男」(40)を含めて、とりわけ西部劇がうまかった。ゲーリー・クーパーと馬が合ったのか、41年には「ヨーク軍曹」、42年には「打撃王」でも共演し、クーパーのツッコミ役として羽振りを利かせたみたいだ。

 ブレナンの出演映画の監督で、注目すべきはホークス、キャプラ、フォード、ワイラーだろう。この4人の監督は僕はアメリカでもベスト1を競う大監督だと思うのだが、ブレナンがこの四大巨頭の傑作に出ていたことは名誉なこと。だから僕はブレナンを尊敬する。先々週当サイトでも特集したホークスの「リオ・ブラボー」(59)のコメディ・リリーフぶりももちろんだけど、キャプラの「群衆」(41)で演じた浮浪者役のキャラクターがまた実においしかったことか。ブレナンがふにゃっとした声で<亡者>について力説するシーンは、世にもおかしな名演技。ブレナンはプライドの高い老人を演らせたらピカイチである。

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