ロナルド・レーガン (今週のスター)

 映画を世代別に分けるとするなら、映画誕生から20年代までがサイレント時代、30年代から50年代がハリウッド黄金時代、60年代から70年代までがニューシネマ時代だとすると、80年代は「レーガン時代」と命名すべきだろう。実際にも海外の映画研究本には80年代が「レーガン時代」というカテゴリーでくくられているものを筆者も見たことがある。これはすなわち、元映画俳優のヨボヨボな老人が政界入りし、大統領にまでなってしまうのだという、そのような時代性を指している。映画もずいぶんと多様化し、音楽・ファッションなど様々なカルチャーが多様化していったが、その象徴がレーガン大統領だったのだ。
 映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」には、30年前にタイムスリップした主人公が、「今の大統領はロナルド・レーガンだよ」といっても信じてもらえない一幕があったが、それほどレーガンの政界入りは歴史的にユニークな事件だった。

 一般の人名辞典に名前が載っている映画人はわずか3人のみ。チャップリン、ディズニー、そしてレーガンだ。この3人だけはどの人名辞典を見ても100%の確率で載っているはずなのだが、純粋に映画プロデューサーとして紹介されているチャップリン、ディズニーと違い、レーガンはもちろん政治家として書かれてあるまでである。場合によっては元映画俳優ということすら割愛してあることもある。
 社会科が大の苦手だった筆者もレーガンがかつて映画俳優だったことを長い間知らなかった口だ。無理もない。レーガンの映画には何もアタリがなく、ほとんどの作品が日本未公開だからである。アメリカでは割と国民的アイドルのひとりだったようだが、日本では無名だった。筆者もいくつかの作品でチョイ役で出ているのをチラッと見たくらいにしか記憶にない。何本かビデオはあるようだが、それも「あのレーガン元大統領が出ていた映画」という好奇で売られているだけにすぎず、映画としての価値は薄い。
 本来ならばレーガンも、星の数ほどいる「消えゆく役者たち」の仲間なのだろうが、彼だけは第二の人生に成功したことになる。

主な出演作品
「戦場を駆ける男」(42)
「陸軍中尉」(43)
「勝利への潜航」(57)
「殺人者たち」 (64)←おすすめ

オリジナルページを表示する