ロジャー・ムーア (今週のスター)

ジェームズ・ボンドといえばこの人だ
 「007」は世界でもっとも愛されているシリーズ物である。そして、ジェームズ・ボンドといえば、ロジャー・ムーアである。誰がなんといおうと、こればかりは譲れない。そう思っているのは僕だけじゃないはずだ。歴代ボンドの中でも一番の男前。僕の中では、「諜報部員」のイメージはロジャー・ムーアで固まっている。

 イギリスでは誰が演じたボンドが一番人気があるのか知らないが、アメリカではボンドといえば、初代のショーン・コネリーだということだ。なるほど、たしかに「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」で青年ディカプリオが、大人を気取ってショーン・コネリーの真似をしていた。そういえば、「ロスト・イン・トランスレーション」で「ジェームズ・ボンド、ロジャー・ムーア」と連呼してる日本人カメラマンがいたけど、やっぱり日本ではロジャー・ムーアのイメージの方が強いのだろう。ロジャー・ムーアは3代目ボンドであるが、シリーズの出演本数はコネリーよりも1本多い7本。日本で流行った時期から考えても、あのエレキギターのテーマ曲を聴くなり、日本人なら、まっさきにロジャー・ムーアの顔が浮かんでくる。やっぱりジェームズ・ボンドといえばロジャー・ムーアである。

 僕はロジャー・ムーアの大ファンだが、というのも、彼の当たり役がジェームズ・ボンドだけだったからである。寅さんを演じた渥美清みたいなものだ。だから、ジェームズ・ボンドといえばロジャー・ムーアであり、さらに、ロジャー・ムーアといえばジェームズ・ボンドという計算式も成り立つ。ショーン・コネリーは名優だが、彼には他にも数え切れない代表作がある。コネリー・ファンはコネリーの映画の中で一番面白いのは「007」だと言っているが、僕の視点から言わせてもらえば、コネリーの「007」は、何かスターの風格がありすぎて、浮いた気がしてならないのだ(でも「ボンド、ジェームズ・ボンド」と名乗る演技はコネリーの方がうまい)。コネリーは早くボンド像を拭い去りたかったに違いないが、ムーアは拭い去るよりも、磨き上げることに専念した。ボンド像を確立したせいで、4代目ティモシー・ダルトンに交替するなり、シリーズの人気は落ち込み、いよいよ休止に追い込まれた。

 ちなみに、僕が勝手にシリーズの最高傑作だと思ってるのは「ムーンレイカー」(79)だが、これもロジャー・ムーアのボンドだ。

 ピアース・ブロスナンの新生ボンドが始まってから、ハリウッド風の映画になってしまったが、ブロスナンの演技はなかなか可愛くて人気が高い。どっちが本当のボンドになるかは、もう少し様子を見なければわかりませんな。

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