リチャード・ウィドマーク (今週のスター)

悪役が多いことでハイエナと呼ばれたスター
 ひょろっと痩せていて、目つきは薄気味悪く、唇はゆがんでいる。彼がデビュー作に悪役を選んだのは、当然だったか。幼少時代から映画を見まくり、学生時代は学業に励みながらも、俳優になることを夢みて、独学で演技力をつけ、卒業後俳優養成所へ入門。「決して俺はハンサムな男じゃないが、俺にはきっと人にはない個性がある。俺ならやれる」そんな風に自分に言い聞かせて、スクリーンテストを受けたのだろうか。選ばれた作品は「死の接吻」(47)。その時代には珍しくない犯罪映画の平凡なプログラム・ピクチャーであったが、ウィドマークが見せた高笑いは観客をゾッとさせ、作品そのものは忘れられるも、ウィドマークの演技はいつまでも記憶される。大成功であった。ウィドマークには「ハイエナ」という覚えやすいニックネームがつき、悪役スターとして新たな人生がスタートする。
 「ハードボイルド」という言葉が流行するが、その言葉はウィドマークにあるようなもの。人気が出てからは、ハードボイルド作家の雄ドン・シーゲルの「刑事マディガン」(67)に出演するなど、ヒーロー役の出番が多くなるが、たとえヒーローになろうが、どこかダーティな印象を残すのも、ハードボイルドにこだわり続けた結果である。
 老いてから脇役専門になったのはもったいない気もするが、50年以上のキャリアはとにかくでかい。モンローとの共演、西部劇のガンマン役などでも有名だ。

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