リチャード・ギア (今週のスター)

その男前っぷりに憧れた
 昔、リチャード・ギアが生理的に嫌いだった。どうもプレイボーイっぽいところがイヤだったのかもしれない。出る作品のほとんどで美人女優とベッド・イン。「愛と青春の旅だち」(82)はたしかに傑作だが、過大評価されすぎていることに嫉妬心を覚えていたし、女性とは縁がなかった僕にとってはムカつく以外の何でもない俳優だった。ようするにリチャード・ギアにコンプレックスがあったわけで、僕の個人的な趣味でこれほどの名優を避けていたなんて、まことギアさんに対して失礼極まりなかった。今では僕はリチャード・ギアの大ファンである。アルマーニのスーツを着こなすそのダンディな「いい男」ぶりは、僕の中でも憧れである。「プリティ・ウーマン」(90)あたりから嫌味な感じもなくなった。一時期元妻のシンディ・クロフォードが日本でもバカ売れしたときがあったが、これもリチャード・ギア効果だろうか。
 僕が驚いたのは「シカゴ」(02)でニコニコしながら歌って踊っていたこと。リチャード・ギアがこんなに可愛い俳優だったなんて新発見だった。むしろモテない男役の方が似合うんじゃないかとさえ思った。日本映画のハリウッド・リメイク「Shall We Dance?」(05)ではそっち方面のユーモラスな役作りが受けている。良い具合に老けたものだ。日本映画といえば、リチャード・ギアは黒澤明の「八月の狂詩曲」(91)にも堂々と出演していた。日本映画にこうしてハリウッドの大物スターが出るなんて、そう見られるものじゃない。

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