李香蘭 (今週のスター)

 李香蘭(り・こうらん)は1920年満州に生まれる。日中戦争勃発後の1938年、満州映画社に入社し、日本語を話す中国人女優としてスタートする。39年に来日、日本映画「白欄の歌」(39)、「支那の夜」(40)「エノケンの孫悟空」(40)、「熱砂の誓ひ」(40)で長谷川一夫、エノケンと共演、その美しさが評判になり、彼女の歌う映画主題歌も大ヒットする。
 戦時中は日満親善の慰問歌手として戦地をかけまわる。41年2月11日建国記念日に開催した<唄ふ李香蘭>と題したワンマン・ショーには10万人の観衆が押し寄せ、会場を観衆が7周半取り囲み、騎馬警官が出動するほどの大騒ぎとなり、これは<日劇七回り半事件>として後世まで語り草になっている。このとき二十歳。
 日本敗戦後は中国人スパイだと疑われ、処刑されそうになったが、日本人ということが証明され、中国を去る。47年本名山口淑子に戻り、ブロードウェイ・ミュージカルや新劇の舞台に立ち、香港映画やハリウッド映画「東は東」(51)、「東京暗黒街・竹の家」(55)などに出演(国侮辱ともいえる内容だったが)。邦画でも吉村公三郎の「わが生涯の輝ける日」(48)、黒澤明の「醜聞<スキャンダル>」(50)などの秀作がある。
 51年世界的彫刻家イサム・ノグチと結婚、4年で離婚。58年外交官大鷹弘と再婚、同年「東京の休日」を最後に映画界から引退するが、69年フジテレビの『3時のあなた』のホステス役で健在ぶりをアピールする。テレビメディアではベトナムやカンボジヤを取材、ジャーナリスト的な活躍をした後、74年政界に身を投じ、自民党から参議院に当選。80年、86年と再選され、環境政務次官などを92年まで歴任する。
 原節子、岸恵子も世界的に有名な日本女優だけれども、李香蘭は彼女たちとはまったく路線が異なり、その半生が劇団四季のミュージカルになるほど。いうなれば日本中国史の偉人である。

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