魔法のような風が吹いた『オズ はじまりの戦い』ジャパンプレミア
2月20日(水)、六本木ヒルズアリーナにて、『オズ はじまりの戦い』のジャパンプレミアが行われ、オズ役のジェームズ・フランコ、東の魔女役のレイチェル・ワイズ、監督のサム・ライミが登場した。
『オズ』について
『オズ はじまりの戦い』は、ボームの児童文学作品『オズの魔法使い』を原作とし、一人の男が偉大なる「オズの魔法使い」になるまでを描いたディズニー映画だ。先日ワールドプレミアが開催されたばかりで、ジャパンプレミアはプロモーションイベントとしては世界で2番目になる。つまりはまだアメリカでも公開されていない出来たばかりのほやほやの新作である。筆者は先日IMAXシアターで予告を拝見したが、予告だけでも魔法の世界が視界いっぱいに広がり、それはもう興奮させられた。3D効果も見事なものだったので、これは期待して良いだろう。
筆者は小説の中でも「オズの魔法使い」が最も好きな作品で、「オズ」という言葉を聞いただけで嬉しくなるくらいなので、この映画化には正直本気で興奮した。以前ディズニーは『オズ』(85)という映画も作ったことがあって、これは原作の続編を描いたものだった。筆者が子供の頃に姉と一緒に見た唯一の映画が『オズ』だったのでよく記憶している。ダークな映画で子供心にすごく怖かったものだ。『オズ はじまりの戦い』は、それとは逆に原作小説の前日譚ということになる。
有名小説の続編ではなく、「前日譚」を作るのは、今のハリウッドのトレンドになりつつある。それにしても名作『オズの魔法使い』の前の世界を描くというのは素晴らしいアイデアである。原作を読んでいて、「オズの魔法使い」がいかにして「オズの魔法使い」になったのかまではなかなか考えないところであるが、考えてみるとこれは興味深い。ディズニーがここに目をつけたのは見事としか言いようがない。
ボームの原作の映画化としては、ジュディ・ガーランド主演の『オズの魔法使』(39)があまりにも有名で、ほとんどの映画がモノクロだった時代にガーランドの映画はモノクロの画面がいきなり黄色や緑など極彩色のカラー映像になって大衆の度肝を抜いた。名作中の名作であるがゆえ、ある意味ガーランドの映画が「オズ」の世界のスタンダードになって確固たる地位を確立しているので、『オズ はじまりの戦い』でも、このイメージをできるだけ削がないように作っているようだ。
原作のストーリーに描かれている人生訓は、子供心にもかなり感銘を受けたものである。筆者にとっても生きていく糧になったが、『スパイダーマン』のサム・ライミ監督がこの辺の人生訓をどのように解釈してこの映画に盛り込んで描くのかは非常に興味深いところである。やっぱり基本はホラー映画を得意とする監督なので、ライミ流のダークな怖さもたっぷりと見せてもらえるかもしれない。そしてレイチェル・ワイズら美女たちが魔女役を競演しており、この対決が現代のCG技術で描かれていることも大きな見せ場といえるだろう。
ジャパンプレミアのダンスショー
さて、ジャパンプレミアでは、ゲストたちのためにとっておきのプレゼントとして、オズの世界を表現したダンスショーが披露された。この一夜限りのダンスは、ジャネット・ジャクソンに始まり、ブリトニー・スピアーズやグウェン・ステファニのバックダンサーを務め、少女時代や東方神起の振り付けを手がけたことで有名な仲宗根梨乃の手によるものだ。彼女はロサンゼルスを拠点に活躍する日本人ダンサーで、そのダンスは世界レベル。以前から日本では「日本でも出演して欲しい」という要望の声が多かった。この映画のジャパンプレミアのために、彼女にダンスのステージを用意したのはディズニーからの粋な計らいである。彼女自身も魔女役で登場し、非常に貴重なダンスショーになった。
これを客席からじっと見ていたジェームズ・フランコら3人は、ダンスの最後にダンサーたちに誘われてステージへ登壇した。本人たちも予期していなかったので、成り行きのままジェームズは緑色のジャケットの上に黒い上着を着たままだったし、レイチェルもふわふわの上着を羽織ったままステージへあがって行った。彼らが暖かい格好のままステージに成り行きで上がったことは、彼らにとってある意味ラッキーなことであった。会場はそれだけ寒かったのである。
ステージに立つと、3人は映画の話題は置いておいて、とにかく仲宗根のダンスのことをべた褒めしていた。舞台挨拶の大半がこのダンスの話題だけに終始したといっても過言ではない。
ライミ監督は「素晴らしいです。背筋がゾクゾクするようなダンスでした。ダンスにも映画に出てくるオルゴールを意識した動きがあったのがよかったです」と具体的な感想を述べていた。とはいえ仲宗根は映画を見ずにイメージだけで振り付けをしたというのだから偶然にしてはイメージがよく的中したものである。
レイチェルは「セリフも特撮も使わずに体の動きだけで私たちのスピリットを表現したことに感銘を受けました。最後に私たちをダンスの一部にしてくれてありがとうございました」とべた褒めだったし、ジェームズは「映画よりもダンスの方が出来がいいんじゃないかな。これから映画を見るときにダンスの方が良かったと思わないでくださいね。もし続編を作ることがあったらこの振り付けを取り入れてもらいたいです」とユーモアを交えて絶賛していた。
突然吹き荒れた強風
やがて、イベントが終盤にさしかかったころ、突如会場に強風が吹き荒れた。あまりに突然だったために一般客も悲鳴を上げていたほどで、思わずぶるっと震えてしまうほど冷たい風であった。全身が凍り付いてしまうような寒さが襲ってきて、マスコミ席でもカメラマンたちが皆歯を食いしばって息をシーっと吸っていたし、取材用のテレコにもはっきりとびゅうびゅうという風の音が録音されていてそのときの風の強さを物語っていた。レイチェルの素敵なヘアスタイルも乱れてしまうし、吹き飛ばされそうな強風にジェームズも思わず失笑してしまった。もうここまでくると笑うしかない。
しかし、まだ最後に写真撮影が残っている。ジェームズは男なのでフォトセッションになっても上着は脱がずにすんだが、やはりレイチェルは女性なので美しい肌を見せてくれなければ絵にならない。魔女役のレイチェルは「私が風を呼んだのよ」と冗談を言って場を和ませながらも、期待に応えてふわふわの上着を脱いで綺麗な肩をあらわにしてくれたが、ところが風はここからますます強くなっていくのであった。カメラマンたちも手がかじかんでシャッターをろくに押せなかったくらいだから、レイチェルの寒さは想像を絶するものだったろう。笑顔を絶やさずにカメラマンのリクエストに応じてくれたレイチェルにちょっぴり胸キュンなジャパンプレミアだった。
『オズ はじまりの戦い』は、3月8日(金)から3D/2D全世界同時公開。(澤田英繁)
2013/02/24 5:29