アニメ『シュガー・ラッシュ』日本文化を色濃く反映

『シュガー・ラッシュ』

2月14日(木)、ユナイテッド・シネマ豊洲にて、ディズニーの長編アニメ映像『シュガー・ラッシュ』の上映イベントが行われ、リッチ・ムーア監督とクラーク・スペンサー・プロデューサーが登場した。

『シュガー・ラッシュ』は、テレビゲームのキャラクターたちを主人公にした感動のドラマである。「『トイ・ストーリー3』以来のベスト・アニメ」との高い評価も得ており、アニー賞の最優秀作品賞を受賞するなど、今最も話題を集めているアニメ映画である。

このイベントは、日本人にとっては、すごく嬉しいイベントになった。それは取材しているこちらまで気持ちよくなってくるほどである。というのも、この映画は日本の文化を色濃く反映している作品であり、日本抜きには語れない作品になっているからである。『リロ&スティッチ』を手がけて大ヒットさせたクラーク・スペンサー・プロデューサーは、映画の製作が決まったときから日本のマーケットを特別なものと考えていて、PRの最後の地は日本だと最初から決めていた。作品も日本受けを意識して作ったのだという。

リッチ・ムーア監督も日本のテレビゲームで育った世代で、開口一番から「テレビゲーム発祥の地、日本に来られて嬉しい」と話していた。実は厳密にはテレビゲームはアメリカで生まれたものであって日本が発祥の地ではないのだが、本家アメリカ人が、あえて日本を”テレビゲームの発祥の地”として崇めていたこと。これは我々日本人として感動を覚えずにはいられない。

劇中には『ソニック』(セガ)、『ストリートファイター』(カプコン)、『パックマン』(バンダイナムコゲームス)、『スーパーマリオ』(任天堂)など、日本のテレビゲームの人気キャラクターたちが数多く登場する。日本ではマイナーな『獣王記』(セガ)のラスボスまでチラッと出てくるが、そこまでわかる人は相当なゲームオタクだろう。プロデューサーは「映画のために作ったゲームが実在するゲームだと観客に思わせるためには、日本のゲームキャラクターを登場させることは絶対だった」と語っている。あえてアメリカのゲームキャラクターではなく日本のゲームキャラクターをオールスター寄せ集めているところに監督とプロデューサーの日本のテレビゲームに対する深い愛情を感じることができる。

「子供の頃、『パックマン』を夢中になって遊んだ。そのとき、子供心に、ゲーム設定が不思議だなと思ったんだ。なんでパックマンは丸いものを食べるんだろう。なんでそれを幽霊が追いかけているんだろう。これってシュールだよね。僕は色々な裏のストーリーを漠然と考えていたんだ。子供の頃のそんな思いが、大人になって映画のアイデアになったんだ」とムーア監督は語る。

この映画の世界共通の主題歌”シュガー・ラッシュ”をAKB48が歌っていることも話題を呼んでいる。この歌がまた良い歌で、一度聞いたらサビの部分が頭の中をぐるぐる離れないという麻薬的なほどキャッチーな曲である。AKB48に決めた理由について2人は次のように語っている。

「この映画ではトム・マクドゥーガルという人が音楽スーパーバイザーをやっていて、日本の音楽にも詳しかった。この人に”シュガー・ラッシュ”の世界を集約する日本の音楽は何かないかと聞いて、AKB48を紹介してくれたんだけど、写真を見せてもらって、見た目もサウンドも世界にぴったりで一発で気に入ったんだ。なんでそんなグループ名なのかって聞いたら、48人女子のメンバーがいるんだと聞いてびっくりしたよ。彼女たちの存在を知ってしまったら彼女たち以外に考えられないと思った。彼女たちは”シュガー・ラッシュ”の世界を作るのに大きく貢献してくれた」とムーア監督。プロデューサーも「トム・マクドゥーガルがこのグループを推薦してくれたときに、このパートナーシップを実現できれば映画は必ず成功すると思いました」と言っていた。日本のテレビゲーム文化がオタク文化になってそれが秋葉原文化になってAKB48というグループが誕生したこと、そこまでわかっていて推薦したのだとしたら、トム・マクドゥーガルという人はすごすぎる!

映画全体のイメージソングはアウル・シティーが歌っていて、この他に3つのゲームの世界を表した3つのテーマ曲がある。

ひとつは”フィックス・イット・フェリックス”というレトロゲームで、この主題歌は80年代に『パックマン』など様々なゲーム音楽とロック音楽を融合させて話題になったバックナー&ガルシアに依頼している。80年代に活躍したグループに歌わせているところにセンスがある。

次に”ヒーローズ・デューティ”というシューティングゲーム。これを担当したのはスクリレックスという今全米で売れに売れているエレクトロニカのミュージシャンである。恐らく全米ではスクリレックスの参加が最も話題を呼んだに違いない。なおスクリレックスは劇中にもエキストラとして登場している。

最後のひとつが”シュガー・ラッシュ”というレースゲームだ。この主題歌をAKB48が歌っている。この映画は邦題の付け方もうまい。原題は『Wreck-It Ralph(壊せラルフ)』というものだが、日本ではAKB48の歌う曲をそのままタイトルにしていて、よりAKB48がフィーチャーされているのである。

さらにこの”シュガー・ラッシュ”の世界は、日本の”カワイイ文化”が意識されている。日本のアニメのようなものにしたかったという。原宿ファッションが参考になっているとのことで、今回初来日したムーア監督はこの前日に早速原宿を見学しにいったという。「原宿ガールの存在はビデオや雑誌を見ていただけで、今回初めて本物の原宿ガールを見た。前に来たことがあるような気がしたね。実際の原宿ガールもものすごいキュートで楽しかった。次回作ができるとしたら、レースコースに原宿の竹下通りをそのまま盛り込もうと思った」と結構本気で言っていた。

この”シュガー・ラッシュ”には沢山のライバルキャラクターが登場するが、その声を、吉本女芸人ユニット「シュガーズ」のメンバーが吹き替えている。ただユニット名が似ているというだけの理由で吹き替えに起用されたラッキーな芸人たちである。ということで、「シュガーズ」のメンバーを代表して森三中の三人とアジアンの二人がかけつけると、ムーア監督は何度も黒沢にハグしていた。イベントでは女芸人たちはすごくふざけていたけれど、実際吹き替えは真面目に仕事していて、プロの声優にも劣らない上手い演技をしていることを念のために書き加えておく。

ムーア監督は、なかなかのハンサムだが、司会に「監督が原宿の竹下通りを歩くと女の子たちにキャーキャー言われるかもしれませんね」と言われて、監督は「キャーキャー言われるのは毎日のことだよ。・・・冗談だよ。只今彼女募集中です」とユーモアで返す場面もあった。シュガーズからプレゼントとして、「食べられるレーシングカー」を贈られると、「これって燃費いいの?」と聞いたり、子供みたいにはしゃいでドリフト走行する振りをしてみせた。こういう子供のようなハートを持つ監督が作っているのだから、面白くないわけがない! 『シュガー・ラッシュ』は、3月23日(土)から全国公開だ。(澤田)

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2013/02/17 20:58

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