『ライフ・オブ・パイ』アン・リー監督余裕の笑み
1月17日(木)、有楽町にて、『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』の記者会見が行われ、来日したアン・リー監督が登壇した。本作は第85回アカデミー賞で作品賞、監督賞を含む11部門にノミネートされており、会見でもアカデミー賞に対する質問が目立った。
リー監督は「名誉なことですが、今回はプロジェクトそのものが特別なもの。幸福感に浸っているが、映画が完成しただけでも満足しています」とまとめていたものの、アカデミー賞を取ることについては「世界中の人の前で感謝を伝えたい人にありがとうといえること」が一番大きいことであると話していた。また「アカデミー賞を受賞すると、常にそれが肩書きとしてついてまわります。いつどんなときもどこへいっても”アカデミー賞受賞監督”と紹介されます。私は他にも色々な賞を取っていますが、以前ニューヨーク・メッツの始球式を務めたときには”アカデミー賞監督のアン・リー”と紹介されました。そのときには完璧なストライクを投げてしまいました」とユーモアを交えて語っていた。
『ライフ・オブ・パイ』はブッカー賞受賞の世界的ベストセラーを原作に、少年パイとトラが1隻の救命ボートで227日間にわたって漂流する姿を3D映像で描いたドラマ。これまでのアン・リーの作品とはかなり作風が違っており、本人も「作るのが大変だった。しかし人間の内面を描いたドラマという点では過去の作品と同じ」と確かな手応えを感じつつもブレはないといった感じだった。主人公については「パイは割り切れない数字であり、割り切れない人間性を表し、私たちを象徴する存在なのです」と語っていた。なんでもインドのあっちこっちの学校に直接訪問して約3000人の中から見つけてきたといい、まったく演技経験はないが直感で決めたのだという。「深い眼差しと魂はパイのすべてを持っていた。撮影が始まるとリトルブッダのように悟りを開いたように役に入り込んでいた」と監督も絶賛していたが、漂流する話なのに全く泳げないという大問題も抱えていて、3ヶ月間みっちり水泳も特訓したという。アカデミー賞で11部門ノミネートというのはそれだけでも大変な名誉であるが、演技部門に誰もノミネートされていないことはかなり監督も不満だったらしく「本当は13部門ノミネートであるべきだった」と悔しがっていた。
同賞で最多12部門にノミネートされたスティーブン・スピルバーグ監督の『リンカーン』に対しては、「私はまったく恐れていません。むしろちゃんとスピーチできるかどうかの方が心配です」と余裕の表情で不敵な笑みまで見せていた。『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』は、1月25日(金) TOHOシネマズ 日劇ほか全国公開。3D/2D同時上映。
2013/01/21 1:07