葛飾柴又寅さん記念館が拡張 山田洋次ミュージアムオープン

寅さん記念館

12月15日(土)、「山田洋次ミュージアム」オープン・「寅さん記念館」リニューアルの記念式典が行われ、山田洋次監督らがテープカットを行った。

「寅さん記念館」には、今回新たにタコ社長の朝日印刷所が増設されてリニューアルした。新たにオープンした「山田洋次ミュージアム」は「寅さん記念館」の隣にあり入場券は共通。”フィルムよさらば”がコンセプトで、山田洋次監督作品の35ミリフィルムと映写機などが展示されてあり、監督のこれまでの歩みをたどれる内容になっている。山田洋次の監督デビュー50周年記念作品にして81本目の作品となる『東京家族』(2013年1月19日[土]公開)の公開にも合わせてのオープンであり、式典には同作キャストの橋爪功、吉行和子も参加した。山田洋次らはこの式典の後、ミュージアムを見学し、囲み取材に応じた。

ミュージアムを見学して、山田洋次監督は、「こんなによくできてるとは思いませんでした」と語った。また、展示されているフィルム映写機を見て、「50年間映画を作ってきましたが、来年からはほとんどの劇場がデジタル上映になってしまう。やむをえない事だとしてもあまりにも急激な事だったので、世界中の映画人がとまどいを感じていると思います。技術革新に異議を唱えるわけではありませんが、今回のフィルムからデジタルへの革新が、サイレントからトーキーへと変わったのと同じようなものかは疑問に感じています。デジタルへの移行はもっと議論しながらしていくべきだったのではなかったかと思います。フィルムの映写機がなくなっても、撮影だけは今後もフィルムのカメラでやっていこうと思っています」と話した。

また『東京家族』に新幹線の映像が出てくることについて「小津安二郎監督の『東京物語』ではSLは近代を象徴するものとして出て来ていると思う。今で言うとそれは新幹線になりますが、新幹線には蒸気機関のような機械が動いている実感、メカニズムを感じられる魅力がありません。映写機にも同じものを感じます。フィルムだと動いている魅力があって、どういう仕組みでできてるのかわかるけど、デジタルになると全部ブラックボックスになっちゃって何がどうなっているかわからない。そういうものを鉄道にも感じています」とコメント。アナログの良さは「手間暇をかけること」だという。このミュージアムでは、山田洋次のフィルムに対する愛を感じ取ることができるだろう。

ひとりの監督だけをテーマにひとつのミュージアムができるのはたいしたものである。結構毛だらけである。50年以上のキャリアと、80本を超える長編の数は、世界を見ても稀であるが、まだまだ制作意欲は衰えていない。記者たちの監督への関心は尋常ではなく、予定時間が過ぎても監督を覆うように取り囲んで質問攻めで監督をなかなか帰さなかった。そのことも山田洋次監督の人気の高さを示している。

今回の取材で、筆者も葛飾柴又を歩き、『男はつらいよ』でいつも見慣れたそのままの風景を目の当たりにして、一ファンとして感慨深いものがあった。渥美清亡き今も、金町駅に「柴又はこちら」と手書きで一番大きく書かれてあったことからも、柴又へ訪れる人が絶えないことをうかがわせた。

映画の舞台に架空の町ではなく、実際に存在する葛飾柴又をこのシリーズの舞台としたことは、日本映画のひとつの奇跡ともいえる。寅さんに何度も何度も「葛飾柴又」とセリフで言わせたことも大きかった。今では、まるで柴又が、映画の世界を再現した巨大なテーマパークのような錯覚さえ受ける。早朝から柴又駅前の寅さんの銅像の前で記念撮影をする観光客を多く見た。帝釈天参道のだんご屋に入ると、『男はつらいよ』の出演者が店の前で記念撮影をした写真がずらりと飾ってあった。どのお店にも寅さんの人形が置いてあったし、まさに町ぐるみで寅さんを応援し、愛し愛されている感じがした。

1月は『東京家族』の公開もありリニューアル後の反応が期待されている。帝釈天を参詣したあとは、ぜひとも立ち寄っていただきたい。

寅さん記念館1
山田洋次ミュージアム館内の様子。『東京家族』のジオラマは一見の価値あり。

寅さん記念館2
展示物を鑑賞する山田洋次監督。

寅さん記念館3
寅さんはここでもフィーチャーされている。

寅さん記念館4
寅さん記念館の様子。くるまやも再現されている。

寅さん記念館5
くるまやの店内の様子。

寅さん記念館6
寅さんといえばここ。この茶の間で様々なアリアが生まれた。寅さんのアリアは日本の宝!

寅さん記念館7
今回寅さん記念館で新たにオープンした朝日印刷所。

寅さん記念館8
初期作品の朝日印刷所が再現されている。印刷機は本物で実際に動く。フィルム映写機同様、その動きで仕組みがわかる。

寅さん記念館9
当時の帝釈天参道をジオラマで再現。

寅さん記念館10
寅さんの年表。

寅さん記念館11
寅さんの様々の資料が展示されている。

寅さん記念館12
浅草の映写機。現在の映画館はデジタル映写機に移行しているので、これが最後のフィルム映写機になる。

寅さん記念館13
寅さんのオープニングタイトルにいつも出てくる帝釈天。柴又の名所。ちなみに『東京家族』のモチーフとなった『東京物語』の主役の笠智衆が寅さんシリーズでは帝釈天の御前様を演じていた。

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2012/12/17 4:30

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