阿部サダヲのことを好きでしたと語る西川美和監督『夢売るふたり』初日舞台挨拶

『夢売るふたり』

9月8日(土)新宿にて、『夢売るふたり』の初日舞台挨拶が行われ、松たか子(35)、阿部サダヲ(42)、田中麗奈(32)、鈴木砂羽(39)、江原由夏(27)、木村多江(41)、笑福亭鶴瓶(60)、西川美和監督(38)が登壇した。


『夢売るふたり』は、火事ですべてを失った夫婦が結婚詐欺を繰り返すことで、男と女の切なく危うい愛を焙り出していく物語。大人向けの映画としては、不倫もののタイトルは珍しくないが、結婚詐欺を描いた作品は非常に稀である。”結婚詐欺”という発想から、それを映画にできないかと話が始まり、西川監督がオリジナル脚本を執筆。いまや日本で最も新作を期待される女性監督となった西川監督だが、『ディア・ドクター』から3年ぶり、ついに待望の新作が公開初日を迎えた。チラシに小さく書かれた「人間最大の謎は、男と女」というキャッチコピーが秀逸だが、本作はこれまで男性を中心に描いてきた西川監督が、初めて「女性」そのものをテーマに描き上げたものである。


本作で女性たちを騙す男を演じたのは阿部サダヲ。田中麗奈、鈴木砂羽、木村多江、江原由夏らが騙される女となる。阿部はこの作品にこれまでの作品にない確かな手応えを感じていたようで、「自分でも見たことのない自分の表情を見られて嬉しかったです。殴られたりセックスしたり、俺ってこういう顔するんだと思いながら見てました」と話していた。


西川監督が舞台挨拶の場所で「阿部さんのこと、本当は好きでした」と告白する一幕も。「主演俳優の方と監督は共犯関係でもあるしライバルでもある。カメラを横で見ながら阿部さんのことを好きになりそうだなと思う部分がありまして、それを他の女性スタッフに言ったらみんな同じことを言ってたんですよ。阿部さんに任せて良かったなと思っています」と西川監督が話すと、すかさず笑福亭鶴瓶が「監督、『ディア・ドクター』のときには主演俳優のことを好きにならなかったんですか」と聞き、西川監督は「うーん・・・」と困った様子。鶴瓶は「もういいです」としょんぼりしていた。


阿部は鈴木砂羽のゲロを顔面に浴びる演技にも挑戦しているが、鈴木はただただ申し訳ない気持ちだったようで、舞台挨拶中も「阿部さん、あのときは本当にすみません」と謝っていた。阿部は「いや、僕は非常にいいの撮れてるなと思ったんです。顔にかぶる俳優はなかなかいないので、これは”来たな”と思いました」と嬉しそうに話していた。


「いまだにこの中に立っているのが信じられません。私のことを得体のしれない人だと思っているでしょう」と語るのは江原由夏。舞台女優だが、西川監督に見染められて出演した。4ヶ月にも及ぶウエイトリフティングの特訓を受けて映画の中では本当に68キロのバーベルをあげている。きっかけは役作りとはいえ、関東ブロック大会に出場するや2位になっており、プロの人が「次のリオデジャネイロも狙えるのではないか」と言ったほどである。西川監督の、役作りにかける徹底ぶりがうかがえる。


役作りといえば、松たか子も、資格が必要な役だったため資格試験を受験したというが(何の資格かは語らず)、取得の必要がない西川監督も松に同行して一緒に資格試験を受けたというから、西川監督のその好奇心には頭が下がる。しかし、授業中に松たか子は居眠りをしていたそうで「居眠りをしている松たか子は初めて見ました」と西川監督が明かすと松は「私も人間なんです」と返していた。


鶴瓶は、「誰かとは言わんけど、一連の動作で、腕をこうやってぐいっと引っ張ったとき目と目が見つめあって、キスしようと思ったことがある。アドリブでキスしたらあかんのかなと思った」と振り返り、笑いを誘っていたが、「全然関係ないシーンでしょ」と阿部。西川監督は「お客さんの見方が変わっちゃうといけないから困ります」とちょっとムッとした様子だったが、鶴瓶は「一連の動作でちょっと思っただけや。すみません」と恐縮していた。


最後に西川監督は、「映画では、このメンバーが一堂に会することがないんです。このメンバーが一堂に会する映画をまた撮ってみたいと思うくらい、個性がスクリーンにはっきりと出ていて、女性という生き物の複雑さが出せたかと思います。ああ、女ってこういう生き物なんだなというのを発見していただけるかなと思います」と作品をPRしていた。本作は、トロント国際映画祭、バンクーバー、シカゴ、ロンドンの映画祭でも上映が決定しており、初日の翌日から早速西川監督はトロントへと飛び立つ。女性監督による女性映画『夢売るふたり』は現在公開中だ。(澤田英繁)

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2012/09/10 8:23

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