安藤サクラ『かぞくのくに』プレミアで終了時間を大幅に延長して観客と交流

『かぞくのくに』

7月12日(木)、汐留にて、『かぞくのくに』のジャパンプレミアが行われ、ヤン・ヨンヒ監督(47)と佐藤順子プロデューサー、出演者の安藤サクラ(26)、井浦新(37)、ヤン・イクチュン(36)が舞台挨拶を行った。


『かぞくのくに』は帰国事業を扱った作品。帰国事業とは、1959年から84年まで続いた在日朝鮮人とその家族による北朝鮮への集団移住を意味する。北朝鮮にとっては国家事業の位置づけということでこう呼ぶ。ドキュメンタリー映画を撮って来た在日朝鮮人2世のヤン・ヨンヒ監督が自らの体験をもとに初めて劇映画に挑んだ。これまでの日本映画にはかつてなかったテーマであり、朝鮮だけに色々な意味で挑戦になった作品である。


プレミア上映が終わり、記者とカメラマンが劇場に入場すると、あちこちからすすり泣く声が。映画が終わったあとも観客は余韻に浸って涙していた。そんな状況の中、安藤サクラら登壇者が入場し、拍手に迎えられた。


ヤン・ヨンヒ監督は、「私の作ったドキュメンタリーはいつもお店では韓国映画の棚にあったので、この映画でやっと日本映画として仲間に入れていただけたような気がします。こんな映画受けないよと言われながら、こんな映画が日本映画にあってもいいじゃないかと思いました。世界中で素晴らしいキャストだったと絶賛されています。一番大事な日本での誕生日を皆さんと祝えて嬉しいです」と挨拶した。


ベルリン映画祭でも上映して絶賛された本作。さらにこの日佐藤プロデューサーの口からモントリオール映画祭でも上映されることが発表された。韓国での興行も決定しており、今『かぞくのくに』の世界が広がっている。「日本・韓国での上映が決まって良かったです。北朝鮮の公開はなかなか難しいですが、生きているうちに上映できれば」と監督。この映画を見た人が、監督の腕をつかんで家族の話をずっと喋ってくれたりしたこともあったといい、「政治的な理由で自由に家族と会えない人がこんなにもいるのかと思った」と振り返っていた。


こういう作品の最後にアルファベットの名前が出るのは相応しくないと、最近ARATAから本名に改めた井浦新もこの映画には特別な思いがあったようで、突然「この映画でまだひっかかることがあったり、またこれを訊いておいて自分の中でもっとふくらましたいとか、役について訊きたいとか監督に訊きたいとか、あと北朝鮮のこととか訊きたい人がいたらぜひ手を上げて訊いてください」と振り、まさかの展開に。ここから観客とのQ&Aコーナーになり、結果的に終了時刻を30分もオーバーしたのである。しかしそこには登壇者と観客との温かい連帯感のようなものが生まれていた。


ヤン・イクチュンは『息もできない』でキネマ旬報ベスト・テンの一位を獲得した実力派だが、この日は次々とジョークを連発。「今日は飛行機で来たのではありません。僕は海の上を走って来ました。僕にはこんな力があったんですねえ」と、自分で自分のジョークに「ぷっ」と吹き出していた。フォトセッションのときもわざと変な顔をして安藤サクラを笑わせていた。


安藤サクラは、監督がかなり熱く語っている横でも常にマイペースだった。司会者から「この作品に関わって家族の絆について何か気づいたことはありますか?」と質問されると、「せっかくなんでその質問を違う質問に変えませんか? 私の家族の話なんか聞いてもあれなんで。いや、とても愛に溢れる家族ですよ。皆さんは何か質問はないですか?」と観客に呼びかけて観客は爆笑。最後のまとめの挨拶のときも「ちゃんとまとめて喋ろうかと思ったんですけど、ちょっと質問があるので、質問で終わってもいいですか? これで私の挨拶とかえさせていただきます」と言って観客を和ませた。


監督は、「私はノンポリなんです。北朝鮮という国を見たいわけではなく、北朝鮮にお兄ちゃんがいるので、どういうところに住んでるんだろうと思っているだけです。よく映画に対して国が文句を言うことがありますが、日本にいるので北朝鮮のシステムに従うつもりはないし。私が家族の作品を作ることに文句を言うのは家族だけですから」と話していた。


『かぞくのくに』は、8月4日からテアトル新宿、109シネマズ川崎他にてロードショー。

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2012/07/17 0:50

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