映画のタイトルデザインの仕事とは

赤松陽構造

7月9日(月)、デジタルハリウッド大学にて、映画タイトルデザイナーの赤松陽構造(あかまつひこぞう)氏が公開講座を行った。


赤松氏は北野武監督、黒沢清監督作品など、これまでに400本以上の映画のタイトルデザインを手がけており、来年の大河ドラマ『八重の桜』では「折れない枝」をイメージしたタイトルをデザインするなど、この道の第一人者ともいえる人物である。この授業では、タイトルデザインについて赤松氏の様々な裏話が聞かれた。


そもそもタイトルデザインの仕事とは何か。これは映画のスタッフ名やキャスト、タイトルなど、いわゆるメインクレジットの部分とエンドクレジットの部分のデザインを考えることである。タイトルの文字の書体や色はもちろん、その背景部分のデザインなど総合的に手がける仕事である。絵的センスだけでなく、それがアクションをともなって動作したときにどう映るかまで考えなければならない。この世界で最も著名な人は『めまい』、『80日間世界一周』などを手がけたソール・バスであるが、赤松氏もこれまでソール・バスに多大な影響を受けているという。


赤松氏は、映画のタイトルデザインについて、「映像には動きと時間がついてくる。ある意味観客は必ず見なければならない。時間も限られてくる。これまで40年やってきて得たもので最も大きかったことは、小さい文字も大きいスクリーンで見るとまったく違ったものに見えることである。パソコン上では遅く見えたものも、スクリーン上では物凄い早さになる。この部分に40年のうちのかなりを費やしている。逆に言うとそれが面白いところである」と語る。


実際に赤松氏の手がけた映画のタイトルがプロジェクターで上映されたが、『Shall we ダンス?』では、文字がまるでスクリーンに手書きしているように現れるが、これは完成した文字をポスターカラーで丁寧に少しずつ消していき、それを一コマ一コマ撮影したものを逆回しにして表現している。今ならCGで一瞬でできることだが、当時は徹夜ですべて手作業でやっていた。


『人間失格』のエンドタイトルはいたってオーソドックス。しかし音楽と写真が絶妙のタイミングで映し出されている。「こういうのがベースになっていないとまずい」と赤松氏。『ウォーターボーイズ』あたりからCGが主流になっているが、それでもいくつものデザイン案を何度も出して監督が意図している形へと近づけていった過程がある。『御法度』のときは何と300案も描いて全部NGになったといい、こうなると「死ぬほど一生懸命やるしかない」と赤松氏は言う。


『13階段』ではタイトルだけのためにミニチュアの階段を作ってそこに数字の13を投影するトリッキーな撮影を行ったが、メインタイトルに予算を使いすぎて製作者に怒られたという。それでも、ソール・バスが日本映画でタイトルを手がければ2000万円もの予算がかかるというから(日本映画『敦煌』のタイトルを手がける)、日本ではタイトルに予算をかけるのはなかなか難しいようだ。


与えられた文字をどのように抽象化して具体化するかは、ラッシュをしっかり見て考える。この仕事を続けて「映画を解釈することには人一倍の自信がある」と赤松氏は笑う。「40年やっていてやめようと思ったこともある。そのときは一生懸命やって120%の力を出して向かってみる。それでダメなら向いてないということ」現場でひたすら律儀に仕事を続けてきた赤松氏の教訓である。(取材・澤田英繁)

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2012/07/17 1:12

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