中森明菜 SACDボックスセット発売決定
日本の歌姫、中森明菜のSACDボックスセットが発売されることが決まった。ワーナーミュージック時代のオリジナルスタジオアルバム全14枚と、ベストアルバム4枚の合計18枚をセットにしたもので、すべてレコードジャケットを忠実に再現した紙ジャケット仕様となる。
以前にも中森明菜の紙ジャケは「AKINA BOX」としてBOXが2006年に発売されているのだが、今回発売されるのはSACDとCDのハイブリッド仕様ということになり、SACDが再生できるプレーヤーでは超高音質のSACDとして、それ以外のプレーヤーでは普通のCDとして再生される。2012年に最新24bitデジタル・リマスタリングされたものなので、普通のCDプレーヤーで再生しても以前のCDよりも高音質のサウンドを体感できるだろう。
SACDは普通のCDよりも容量が大きいため、その分、値段も高くなっている。中森明菜の紙ジャケも普通のCDは一枚2,200円。SACDは一枚3,200円なので単体で買うと割高感を感じるかもしれない。しかし、BOXで買えば、2006年のCD-BOXが17枚セット+特別CD「セブンティーン」が付いて37,000円だったのに対し、2012年のSACD-BOXは待望の「BEST III」も加えての高音質の18枚セットで42,000円なので、個別にそろえるよりも15,600円も安くお得である。これはBOXで買わないわけにはいかないだろう。
ただし、どちらも「AKINA BOX」という名前なので、SACDが欲しかったのに2006年BOXを間違って買ってしまった人も少なからずいるので、注文の際には間違えないように十分に注意したい。CD-BOXのみに入っている「セブンティーン」目当てでもなければ、2006年CD-BOXよりも2012年SACD-BOXを買うことをおすすめする。
3月には「ザ・ベストテン」のDVD-BOXも発売され、今年も中森明菜関連商品や企画ものの発売ラッシュは止まらない勢いである。「ザ・ベストテン」ではシングル曲だけしか歌ったことがない中森明菜。明菜の真価はアルバムにこそあるということを、今こそこのSACD-BOXで知ってもらいたい。
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ワーナーミュージック・ジャパンより2012年8月22日発売
オリジナルアルバム解説 | |
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『プロローグ〈序幕〉』(1982年) 中森明菜のファーストアルバム。まだ16歳のころの作品なので、どの曲も初々しく、その初々しさがこのアルバムの最大の魅力となっている。「あなたのポートレート」の歌い方も、まだ歌手としては幼い部分があるがそこがファンにはまたたまらないものがある。来生たかおの楽曲はこの当時の中森明菜にぴったり。「スローモーション」は、テレビで紹介される機会はほとんどなかったが、今聴いても本当に素晴らしい名曲だと思う。 |
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『バリエーション〈変奏曲〉』(1982年) 全体的にポップでつかみやすい作品が多く、ストリングスのイントロダクションを入れるなど作品としての工夫も感じられる。出世作「少女A」を収録。”ツッパリ”ソングだけど、そこが逆に可愛い。明菜の快進撃はここから始まる。この愛らしいルックスで、オリコンチャートもうなぎのぼり。明菜のオリジナルアルバムの中でもこれが最大のセールスを記録している。よしよしと頭をなでたくなるような、そんな可愛らしさが詰まった一枚だ。 |
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『ファンタジー〈幻想曲〉』(1983年) 明菜の詩の朗読から始まるアルバム。タイトル通りファンタジックな雰囲気も加味されている。これに収録されている「セカンド・ラブ」は、メロディといい、明菜の歌声といい、完璧という形容に値する魔法のような名曲。アイドル時代の明菜を象徴する作品であろう。ちなみに、レコードの付録にはサイン入りポートレートが入っていたのだが、そのポートレートが超絶可愛く、今回の紙ジャケットCDではそのポートレートも再現されている。 |
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『NEW AKINA エトランゼ』(1983年) 「新生明菜異邦人」。オリジナルアルバムで唯一明菜の名前が冠された作品。それでいながらシングル曲が一曲もなく、アルバムだけで勝負しており、見事日本レコード大賞のアルバムベスト10に選ばれた。横浜銀蝿のメンバー、財津和夫、谷村新司、細野晴臣などが作曲者として名を連ねており、AKINAという名前を冠するだけの自信に満ちた堂々たる作品となっている。このアルバムと時期を同じくしてシングル「禁区」を発表。同曲はアイドル時代の明菜を代表する重要な一曲となった。 |
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『ANNIVERSARY』(1984年) 筆者は明菜のアルバムではこのジャケットが一番好きである。歌詞カードも明菜のちょっとした写真集になっていて、外国の町を歩く明菜がとっても可愛い。楽曲の中で、目玉はやっぱり「北ウイング」。あのドラマティックなイントロといい、初期作品の中でも最も情景が浮かんでくる作品だと思う。「夏はざま」など、バラード曲では歌手としての実力も安定してきた。他に、「100℃のバカンス」など、元気いっぱい、”アイドル明菜”の魅力がたっぷり詰まった一枚である。 |
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『POSSIBILITY』(1984年) アイドル人気絶頂の頃の作品で、大人っぽいジャケットがちょっと大胆である。リード曲の「サザン・ウインド」はじめ、イントロが印象的な「秋はパステルタッチ」、明菜最後のツッパリ曲「十戒(1984)」など、コーラスや伴奏などが、いかにも80年代歌謡曲ド真ん中といった雰囲気が非常に心地よく、今聴くと良い意味で何か昭和の懐かしさを覚える一枚である。 |
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『BITTER AND SWEET』(1985年) アイドルから脱却して、一アーティストとして第一歩を歩み始めた作品。「飾りじゃないのよ涙は」はシングルバージョンとは印象がちょっと違う。ここから振り付けが自由になり、明菜は自分の感情のままに体を動かすスタイルを習得する。アルバムからも明菜のその自由さが表れている。まだアイドルとしてのあどけさなも残っており、作品にも荒削りな部分はあるが、「BABYLON」、「APRIL STARS」など、新しい歌い方にも挑戦しており、ファンとして興味深く、明菜過渡期の秀作である。 |
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『D404ME』(1985年) それまではシングル指向が強かったが、ここからカバーアートも含めてアルバム指向を強めて行く。本作は1枚のアルバムとしてキャッチーな作品がバランスよく配置されており、これまでのアルバムと比べても完成度が格段にアップしているのがわかる。特にアナログ盤でいうB面に値する「BLUE OCEAN」以降を初めて聴いたときにはかなりビビビときた。ポジティブで活発的。これまでの作品と比べて、歌い方にも変化があり、声量もあがっており、一アーティストとして大きく成長している様が目に見えてわかる。シングル曲しか知らなかったファンにとってはかなり新鮮な一枚。シングルでも有名な「ミ・アモーレ」のリミックスバージョンが収められているが、シングル盤に勝るとも劣らない素晴らしいアレンジである。明菜初心者にもオススメの一枚。何度でも聴きたい極上のポップ・アルバムである。 |
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『不思議』(1986年) 声のボリュームが落とされ、リズムを全面に押し出した感じ。アルバムをシングルの集合体としてではなく、一枚のアート作品として作り上げたいわゆる「コンセプト・アルバム」なので、異色作ながらもアルバム全体のまとまりは明菜の作品の中でもずば抜けて高い。前作のポップサウンドとは打って変わってロック調のバンドサウンド構成となっているが、繰り返し脈を打つようなリズム、うねるベースの腹にぐるぐると響く重低音、ところどころで響くストリングスやエレキギターのリヴァーブなど、何重にも厚みを増して、すべてが幻惑されるような音の引力を持って奏でられ、聴いているうちに陶酔させられてしまう。名盤。 |
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『CRIMSON』(1986年) 日本の80年代歌謡曲の集大成ともいえる作品となっており、曲を聴いていると情景が浮かんでくるようなロマンティックなアルバムになっている。そのウィスパーヴォイスは大人としてだいぶ成熟した感じで、十代のあどけなさはすっかりなくなっている。意外にもシングルカットは1曲もないが、歌い方が全体を通して一貫しており、前作に続いてコンセプト・アルバムの趣向を残した様子で、明菜のまた新たな変身が体験できる。1曲だけ「ミック・ジャガーに微笑みを」だけが声色がまったく違っているが、これだけはラジカセから流れている曲を中森明菜が聴いているという演出が施されていることで全体のバランスを保っている。普通の曲では見られない、プライベートな明菜を想像させる心憎い演出である。 |
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『Cross My Palm』(1987年) すべての曲を英語で歌った意欲作。全部英語ということで、これもアルバム全体を一作品として一貫したコンセプトの中で完成させているので、やはりシングルカットはなし。筆者の専門は洋楽であるが、まったく違和感無く聴くことができた。アメリカ・イギリスのポピュラー音楽の醍醐味を見事に我が物にしている明菜には感服。英語で歌っているというだけでも凄いのに、さらに驚くのは、このアルバムはバラエティ豊かな曲調で作られていながら、明菜はそれぞれ曲調に合わせて、声を自在に使い分けていることである。この1枚で明菜の七変化ヴォーカルをたっぷりと堪能することができる。明菜という歌手はスタイルを固定することを良しとせず、アグレッシブなシングル「TANGO NOIR」に続き、常に自分のキャラクターを変えてきたのである。 |
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『Stock』(1988年) 中森明菜によるロック・アルバム。代表作「DESIRE-情熱-」の流れをそのままアルバム全体に受け継いだような作品。1曲目「FAREWELL」から情熱的な展開で明菜ファンのハートをわしづかみにする。この声こそ、まさに中森明菜のイメージそのもの。バリバリにディストーションの効いたメタリックなギターサウンドを前面に押し出し、ビートの効いたアップテンポの作品で固め、明菜も激しくシャウトしながら、一気に最後まで駆け抜けて行く。紙ジャケの帯によると「未発表曲集」のような印象を受けるが、ツギハギ感は皆無。普通なら何曲かバラードが入ってもいいところだが、明菜のコンセプトは今作でも終始一貫している。圧倒的なパワーを感じる濃厚な作品で、筆者はこのアルバムが明菜の作品の中でも特にお気に入りである。 |
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『Femme Fatale』(1988年) 3年ぶりに明菜の顔がそのままジャケットになった。ピーター・フランプトンなど海外の有名なミュージシャンも参加している。タイトルの意味は「魔性の女」。あの明菜がこんなタイトルをつけたことにドキドキさせるが、作品からもどこか妖艶な色気を感じさせる。全体的にビート感あふれるダンサブルなナンバーが多く、聴いていると自然と体が動きだす。壮快にしてかっこいい。「So Mad」などが『夜のヒットスタジオ』で披露され、アルバム曲の一曲ながらもそのスタイリッシュなダンスセンスは鮮烈な印象を残した。コンサートツアーではさぞかし盛り上がったであろう。 |
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『CRUISE』(1989年) ワーナーミュージック時代最後の作品。年数ではたったの8年しか経っていない。たったの8年の間にこれだけ成長していったのは大変なことである。数々の伝説も残したが、この後、明菜はしばらく音楽界から離れることになる。この作品を最後に『ザ・ベストテン』も『夜のヒットスタジオ』も放送を終了してしまうため、その思いもあって、このアルバムを聴いていると何やらじんと来るものがあるわけで。バラード中心の構成で、明菜もしっとりと歌っているが、一曲一曲の楽曲の完成度は非常に高く、明菜も心を込めて歌い上げている様子が伝わってきて、聴けば聴くほどに味わい深い作品である。「LIAR」はやはり何度聴いても感動する。 |
解説・澤田英繁 ※画像はすべてCDジャケットより
2012/06/18 2:55