『道~白磁の人~』ちょっと冷や冷やな舞台挨拶
6月9日(土)新宿にて、『道~白磁の人~』(新宿バルト9、スバル座ほか全国公開中)の初日舞台挨拶が行われ、吉沢悠、酒井若菜、石垣佑磨、塩谷瞬、黒川智花、近野成美、田中要次、手塚理美、高橋伴明監督が登壇した。
この日はあいにくの雨であったが、主演の吉沢は、「本日はみなさん雨の中、ありがとうございます。僕が『道~白磁の人~』のイベントに関わると必ず雨が降ります。本来晴れ男のはずなんですけど、なんでだろうと思っていました。昨日ちょっと気づいたんですけど、劇中でも描かれていたように浅川巧さんが亡くなったときに大勢の朝鮮人の方が棺を担がせてくれと集まられたようで、実際の浅川巧さんの葬儀のときには雨が降っていたそうです。今日の初日、雨が降り、みなさんが浅川巧さんを見に来てくださいました。きっとそこには何かリンクするものがあるんじゃないかと感慨深いものがあります」と挨拶していた。
『道~白磁の人~』は、1914年、日本が韓国を併合してから4年後に、林業技師として荒廃した山々を緑に戻すため、日本の山梨から京城(ソウル)にやってきた浅川巧と、彼と共に歩いて行った朝鮮人イ・チョンリムの半生を描く実話を元にした感動のヒューマン・ストーリー。
撮影のほとんどを韓国で行い、スタッフもほとんどが韓国人ということで、日本映画でありながらも、日韓合作と言っても過言ではない内容である。1ヶ月韓国に住んで撮影をしていたキャストたちも毎日一緒にご飯を食べて本当に仲良くさせてもらっていたとのことで、撮影が終わってもその友情は続き、手塚理美をリーダーとして「白磁の会」を結成して、今でも月に一度監督も連れて一緒に酒を酌み交わしているという。初日の舞台挨拶はメンバー同士のそういう仲の良さが伝わってくるような、実に和気あいあいとしたものだった。
吉沢は「塩谷くんは飲み会ではいつもいじられ役」と話していたが、この日は塩谷瞬の熱狂的ファンの女性が客席にいて、舞台挨拶中も「塩谷さん!」と何度も何度も声をかけていた。空気を読めず、登壇者が大切な話をしているときにも、その話を途中で遮って「塩谷さん、フランス人形のような瞳が素敵です!」と猛烈アピールしてトークを白けさせ、司会者を困らせた。また、写真撮影のときには今度はマスコミが塩谷に「新しい恋は始まってますか」と質問攻め。塩谷は爽やかな笑顔で会釈しながら舞台を後にしていた。色々な意味で久々に冷や冷やさせる舞台挨拶となったが、この後で塩谷は多分吉沢や石垣から相当笑いのネタにされたのではないかと想像する。
本作は、7月には韓国でも公開が決定している。高橋監督は、「今の時代だからできること。日本映画が禁止されていた時代もあった日韓の関係のなかで、ほぼ同時に公開できるのは奇跡に近い」とコメントしていたが、これを機に、今後の映画業界では、これまで大人の事情で描かれることがなかった日韓の歴史にももっともっとスポットが当てられて行くに違いない。(澤田英繁)
2012/06/11 2:01