ドリーム モーニング娘。映画第1弾『篤姫ナンバー1』

『篤姫ナンバー1』

「ドリーム モーニング娘。」(以下「ドリムス。」)という音楽グループがある。知らない人のために説明すると、これは「モーニング娘。」(以下「モー娘。」)を脱退したメンバーたちが新結成したグループである。初代メンバーにして初代リーダーの中澤裕子(38)を中心に10人が集まっている。一方で本家の「モー娘。」も現在絶賛活躍中であるため、今の音楽シーンでは同じ名前を含む2つのグループが同時に活動していることになる。恐らく内心ではライバル同士だろう。徳川家定と徳川家康が同時に活躍してるみたいで、まるで本家VS元祖みたいでややっこしいけど、こうやって両者をぶつけてきて面白いことをやってくれるのも、いかにも関西人つんく♂らしいところだ。


「ドリムス。」は現在はいったん活動を休止しているとのことだが、筆者はその真逆だと思う。まさにこれからがスタートであって、これからどんどん活躍していくに違いない。3月13日に汐留で行われた『篤姫ナンバー1』の完成披露試写会を経て筆者はそう確信した。


『篤姫ナンバー1』は、「ドリムス。」メンバーが出演している映画である。主演は石川梨華(27)。そのライバル役が石川と同期でもある吉澤ひとみ(26)だ。中澤裕子はその「教育係」といういかにもわかりやすい役柄での出演となっている。石川演じる「篤姫」こと島津篤子が、現代の東京にタイムスリップしてやってくる。そこでカルチャーギャップに戸惑いながらも、ホステスとして働き、ナンバー1を目指す。その間に現代人と恋に落ちたりする物語である。


何事にも映画は見てみなければわからないので、筆者も作品を鑑賞させてもらった。ネットのコメントを見ていると、予告を見た感想で「安っぽい」と書いている人がいたけど、いやいや、これがなかなかの傑作で、テレビに映っている水戸黄門の葵の紋を見て思わず篤姫がひれ伏したり、ギャグのセンスなど絶品である。石川演じる篤姫が現代に来ても「時代劇言葉」で話し続けるところが面白い。


そして現代人との純愛。世界の違う2人の恋はどうなるのかとぐいぐいストーリーに引き込まれた。久しぶりに堂々と「純愛」と謳える作品になっていると思う。笑って笑って最後にはほろりとさせるプロットの模範的作品。ラストはもうお見事の一語。そういう意味では、今年の恋愛映画のベスト候補として筆者は一票を投じたい。筆者はうかつにもラストで泣いてしまったではないか。


話を「ドリムス。」に戻せば、これは「ドリムス。」の活動開始を告げる第1弾といえるのではないかと思う。主題歌を歌っているのは「ドリムス。」である。タイトルは「シャイニング バタフライ」。これまで「モー娘。」の曲をカバーしてきた「ドリムス。」がついにオリジナル曲でアタックして来たわけで、その第1弾にふさわしくつんく♂渾身の傑作になっている。筆者もすごく好きな曲なので、もう何十回も繰り返し繰り返し聴いた。このミュージックビデオがまた良くって、よく見ると『篤姫ナンバー1』と微妙にリンクしていたりする。ちょっとだけ高橋愛も出ていて「今後もしや」なんて思っちゃったり・・・。


完成披露試写会だが、つんく♂ご本人のお出ましである。いや、ボスがこうして中央に立つとは思わなかった。つんく♂は「これから篤姫の生まれ故郷の鹿児島(薩摩)にヒット祈願に行ってきます」と言ってたくらいだが、同じ丹羽多聞アンドリウ映画の「モー娘。」の記者会見にはつんく♂が参加してなかったことからも、この映画に懸けているのがわかる。


筆者の予想だが、「ドリムス。」は映画と音楽の両方を柱にして活動していきそうな気がするのだ。『篤姫ナンバー1』は「ドリムス。」映画作品の第1弾(だからナンバー1)で、今後も第2弾第3弾と「ドリムス。」映画が次々と出てくるのではないかと思っている。映画としての出来栄えは非常に良いのだし、今まさに「ドリムス。」が面白くなってきたところだから、この大波に乗らない手はあるまい。


舞台挨拶で、山崎裕太と吉澤ひとみに「付き合っちゃえよ」と冗談で言っていたつんく♂。「小栗旬くんと山田優ちゃんも共演したのがきっかけだから、この映画からもそうやってカップルができたら話題作りになってヒットすると思うんだけどな」と、映画の内容とは別のところで映画を宣伝しようとしていたところがいかにもプロデューサーらしいところで、そういう視点もあるのかと筆者も一映画ライターとして学ぶところがあった。そんなつんく♂は山崎から「あのね、話題づくりのために自分の娘を送り出さないでください」と返されて場内は大爆笑だった。こういうシャレからも「ドリムス。」を売り出している気持ちが垣間見えた。


余談だが、ひとつ興味深かったのが、吉澤ひとみが映画の内容を紹介するとき「女同士の戦いもあるんですけど、そういうのはモーニング娘。時代にも経験しているので」と言って、それを聞いた中澤裕子が横で「ハハハ」と大笑いしていたこと。さらに吉澤は「クラブで姐さんとのからみがなくてよかった。姐さんがホステスだったら姐さんがナンバー1でもいいです」と言っていて、グループ間の上下関係が見えてきて面白かった。たしかに「モー娘。」時代も「ドリムス。」でもででーんと構えていかにもリーダーっぽくて姐御という感じの中澤だが、「なんで私が主演じゃないのよ」と冗談で言っていたのも愛嬌。劇中の「教育係」役はまさにはまり役であった。(澤田英繁)


『篤姫ナンバー1』は、4月7日(土)新宿ミラノ3ほか全国ロードショー。

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2012/03/19 2:45

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