ちょっと違う切り口の映画ニュースをお届けするウェブマガジン


日本アカデミー賞授賞式『八日目の蝉』井上真央と永作博美がダブル受賞

井上真央、永作博美

3月2日(金)グランドプリンスホテル新高輪にて、第35回日本アカデミー賞授賞式が行われた。最優秀作品賞には『八日目の蝉』が選ばれ、主演女優賞(井上真央)、助演女優賞(永作博美)、監督賞(成島出)など全10部門で最優秀賞に選ばれた。週刊シネママガジンでは、授賞式の模様をマスコミ側の視点からレポートしながら、映画ファンなりの楽しみ方について書きたいと思う。


【25台の円形テーブル】

日本アカデミー賞は日本映画界で最も大きな映画賞であり、毎年1年間の中で最も優れた作品・俳優・スタッフに「最優秀賞」という栄誉が与えられる。日本アカデミー賞で最優秀賞を受賞することは日本の映画人にとって最大の誉といえる。


受賞者の発表と授賞式が同時進行で行われるのは米国アカデミー賞と同様であるが、大きな違いは授賞式の会場が米国はシアター形式、日本はディナーパーティ形式になっているということである。会場には25もの円形テーブルが置かれ、原則としてひとつのテーブルに一本の映画の関係者、すなわち俳優、監督、プロデューサーが座ることになっている。相席もあるが基本はテーブルの数だけ映画があるというわけだ。


シアター形式の会場の場合、出席者は皆ステージ一点に注目するしかないが、ディナーパーティ形式の会場の場合、アルコールも入ってほろ酔い気分の中、出席者の視線はステージよりも仲間たちの方向に向けられる。テーブルがひとつのシマになっていて、仲間同士の結束力が強く、最優秀賞に選ばれたときには皆でその喜びを分かち合うことができる。受賞者にはトロフィー・賞状・賞金・賞品が贈られるが、受賞したことで得られる名誉は物やお金にはかえられない素晴らしいものである。


我々映画ファンの楽しみは、最優秀賞が発表されたとき、テーブル席で歓喜の声をあげる受賞者とその仲間たちの幸福感に満ち溢れた顔を見ることである。受賞者は本当に嬉しそうで、生き生きとしていて、見ているだけで幸せを分けてもらえる。


【受賞ラッシュの流れ】

今年はとにかく『八日目の蝉』のテーブルが熱かった。同作は技術部門もほぼ総取りだったが、最優秀賞の発表のたびに成島監督が「よし!」と力強くガッツポーズを取って我がことのように喜んでいたのが印象的だった。唯一逃したのは美術賞だけだったが、美術賞が一番最初の発表だったので、それ以降から完全に『八日目の蝉』の流れになった。


毎年授賞式にはこういった「流れ」がある。結果は始まる前から決まっていることだけれど、不思議と一度受賞ラッシュの流れを作ってしまえば、その流れはなかなか覆されるものではない。しかし最後までわからないのが日本アカデミー賞。一昨年は『剱岳 点の記』が完全に勝ちの流れを作っておきながら最後の最後で『沈まぬ太陽』に最優秀作品賞を覆されるという予期せぬ展開もあった。今年はそういった番狂わせもなく、「『八日目の蝉』独り勝ち」の様相を呈していたが、こうなってくると井上真央が「周りでポンポン最優秀賞を取っていたので、私も取れて良かったという気持ちでいっぱいです」と逆にプレッシャーに感じていたのも理解できる。逆に成島監督はここまで来たら監督賞はもう自分しかいないと安心しきっていたようだが、過去『ALWAYS 三丁目の夕日』で小雪一人だけが最優秀賞を逃した前例もあったから最後の最後まで勝負はわからない。


登壇者の関連映画についても頭に入れておくと授賞式がもっと楽しくなる。例えば堺雅人。『武士の家計簿』で主演男優賞の賞レースに参戦しているが、堺雅人が出演している『ツレがうつになりまして。』と『ブッダ』は別の部門で別の人が戦っていて、一概に『武士の家計簿』一本だけで堺雅人を語れない。佐藤浩市も『最後の忠臣蔵』以外の作品にも2本出演しているし、もっとマニアックなところでは、満島ひかりは『一命』で助演女優賞に参戦しているが、実は話題賞を受賞した『モテキ』にも深く関わっていたりする。去年『悪人』で主演女優賞を制した深津絵里は今年も『ステキな金縛り』で参戦している。受賞者は大抵その翌年も成功しているので去年との関連を調べてみるのも面白い。


【ドレスアップした女優たち】

綺麗にドレスアップした女優を見ることも授賞式の楽しみのひとつである。長澤まさみは見事な美脚を披露していたし、桜庭ななみの着物姿も可愛かった。満島ひかりの口紅も男としてグッとくるものがあった。他、前田敦子、麻生久美子、中谷美紀などなど皆さん本当にお綺麗で。ドレス競争では筆者のイチオシは井上真央だが、これについては後述する。驚くのは小池栄子のド迫力バスト。司会の関根勤もネタにしていて小池栄子は「『八日目の蝉』では胸をつぶして演じました」と話していたけど「つぶして」っていったい何やったのよ小池さん。以前は真面目で硬いイメージの授賞式だった日本アカデミー賞も、近年はこの通り明るく和やかになった。


どの部門をどの作品が取ったかよりも、どの作品がどの部門の賞レースに参戦しているのか。そこから考えることが大事である。部門から作品を見るのではなく、作品から部門を見ることが通な見方と言える。結果よりもそこまでのプロセスの中で生まれる様々の人間模様が面白いのであって、プロセスこそ授賞式の一番の楽しみだと思う。


自分でどの作品が取るのか友達と一緒に予想しておけば、最優秀賞受賞者発表のとき、ちょっとしたドキドキ感も味わうことができる。筆者はたまたま隣にいた記者ととても気が合ったので勝者予想をして、例年よりも授賞式をより深く楽しむことができた。予想が当たるとだんだん見ているこっちまで熱くなって来たものだ。4時間もある授賞式なんだから徹底的に楽しまなくっちゃね。


【授賞式前の受賞者予想】

筆者が最初に予想していた最優秀賞受賞者は以下の通り。

作品賞予想 『八日目の蝉』
監督賞予想 成島出 『八日目の蝉』
主演男優賞予想 大泉洋 『探偵はBARにいる』
主演女優賞予想 長澤まさみ 『モテキ』
助演男優賞予想 でんでん 『冷たい熱帯魚』
助演女優賞予想 永作博美 『八日目の蝉』

これには理由がある。『八日目の蝉』はここ数年で筆者が見た作品の中でもダントツの傑作で、見事な映像美と、映画ならではの編集のダイナミズムに裏打ちされて、原作を凌駕する内容だったから。これ以外作品賞と監督賞は考えられなかった。助演のでんでんと永作博美は過去の話題性の高さから予想した。主演女優賞の長澤まさみは自分の殻をぶち破ったことを評価して。


主演男優賞は原田芳雄が最有力と言われていたが、原田芳雄は故人であり、特別賞も受賞しているので敢えて予想から外した。そうなると一番取った時のコメントが聞いてみたい大泉洋を応援したくなる。結果は原田芳雄だったが、代理でトロフィーを受け取った娘さんの笑顔を見て、幸せにはちきれんばかりの本当に良い表情をしていたのでこれで良かったと思う。


【どっちが主演? 井上真央と永作博美】

筆者としては永作博美こそ主演女優賞にと思っていたので、当初の予想では、井上真央は逆に予想から外していた。長澤まさみが助演女優賞ではなく主演女優賞の方に選ばれて、永作博美が主演女優賞ではなく助演女優賞の方に選ばれたのがどうにも納得できなかったからである。個人的には井上真央と永作博美の主演女優賞レースでの激突を見てみたかったのだが。


しかし、実際に授賞式が始まってみて、ドレスアップした井上真央がレッドカーペットに登場したとき、なんと輝いていたことか。出席者の中でも最も目を惹きつける圧倒的な存在感があった。このオーラ。もうこれは最優秀主演女優賞受賞者は井上真央しかいないと確信した。去年は映画にドラマに紅白にと、まさに当たり年だった井上真央。発表のときには筆者もすっかり井上真央を応援していた。そして永作博美が助演女優賞に選ばれたことで、主役の2人が仲良くダブル受賞するという快挙を成し遂げたのである。なるほど、ダブル受賞までを見越して永作博美をわざと助演女優賞扱いに回してもらったと思えば合点がいく。2人が同じ部門で激突していたらこのツーショットは拝めなかった。


受賞スピーチで息を大きく吸って、感動と興奮で少し声を震わせながら「小さい頃テレビで見ていたこの舞台にもし自分が立ったらこんなことを言おうと思っていたのに、今は頭が真っ白です」と言う井上真央の姿には思わず胸キュン。本当に良い顔だった。最優秀賞に選ばれて筆者も心から嬉しかったし、来年の授賞式の司会もぜひ井上真央にやって欲しいと思った。いやー、本当に良かった。素敵な感動をありがとう。(澤田英繁)

【この日出席した主な著名人一覧】

作品 名前 受賞
『八日目の蟬』 石田雄治(日活) 最優秀作品賞
井上真央 最優秀主演女優賞
永作博美 最優秀助演女優賞
小池栄子 助演女優賞
渡邉このみ 新人賞
成島出 最優秀監督賞
奥寺佐渡子 最優秀脚本賞
安川午朗 最優秀音楽賞
藤澤順一 最優秀撮影賞
金沢正夫 最優秀照明賞
藤本賢一 最優秀録音賞
三條知生 最優秀編集賞
松本智恵 美術賞
『大鹿村騒動記』 原田麻由
(原田芳雄 長女)
最優秀主演男優賞
会長特別賞
岸部一徳 助演男優賞
阪本順治 監督賞
『最後の忠臣蔵』 役所広司 主演男優賞
佐藤浩市 助演男優賞
桜庭ななみ 新人賞
杉田成道 監督賞
西岡善信 最優秀美術賞
原田哲男
『ステキな金縛り』 深津絵里
(司会兼)
主演女優賞
三谷幸喜 監督賞
脚本賞
『探偵はBARにいる』 大泉洋 主演男優賞
松田龍平 助演男優賞
橋本一 -
『一命』 満島ひかり 助演女優賞
『あしたのジョー』 伊勢谷友介 助演男優賞
『冷たい熱帯魚』 でんでん 最優秀助演男優賞
『ツレがうつになりまして。』 宮﨑あおい 主演女優賞
佐々部清 -
『阪急電車 片道15分の奇跡』 中谷美紀 主演女優賞
宮本信子 助演女優賞
『武士の家計簿』 三沢和子
(森田芳光 夫人)
会長特別賞
堺雅人 主演男優賞
『RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ』 三浦友和
『一枚のハガキ』 新藤兼人 監督賞
『岳-ガク-』 片山修 -
『モテキ』 長澤まさみ 主演女優賞
麻生久美子 助演女優賞
大根仁 話題賞
『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』 前田敦子
『コクリコ坂から』 宮崎吾朗 最優秀アニメーション作品賞
鈴木敏夫 -
『映画「けいおん!」』 山田尚子 アニメーション作品賞
『手塚治虫のブッダ-赤い砂漠よ!美しく-』 森下孝三
『豆富小僧』 小岩井宏悦
『名探偵コナン 沈黙の15分(クォーター)』 静野孔文
『漫才ギャング』 上地雄輔 新人賞
『軽蔑』 高良健吾
『セカンドバージン』 長谷川博己
『さや侍』 野見隆明
熊田聖亜
大道具 御所園久利 協会特別賞
プレゼンター
(昨年度の受賞者)
妻夫木聡 -
柄本明
樹木希林
久石譲
中島哲也
米林宏昌
岡村隆史
司会 関根勤
豊田順子
鈴江奈々

[PR] 戦国時代カードゲーム「秀吉軍団」好評発売中

2012/03/04 0:39

サイトのコンテンツをすべて楽しむためにはJavaScriptを有効にする必要があります。