『ヒューゴの不思議な発明』マーティン・スコセッシが日本の大学生に映画とは何かを教える

『ヒューゴの不思議な発明』

2月17日(金)。六本木ヒルズにて、『ヒューゴの不思議な発明』のマーティン・スコセッシ監督が、映画業界を目指す日本の学生たちの前で一夜限りの特別授業を行った。


マーティン・スコセッシは映画業界において一番を争う映画マニア。映画史にも詳しく、映画史のドキュメンタリー番組などにも解説者として出演することが多い人である。『暗黒街の顔役』などクラシック映画を語らせたら止まらない。そんな無類の映画キチガイでありながら、意外にも「映画」をテーマにした映画をこれまで作ったことがなかった。『ヒューゴの不思議な発明』はそんなスコセッシ監督によるお待ちかねの「映画」のための映画である。監督にとっては初の3D映画。3Dという新しい映画のオモチャを与えられて思い切り遊ぶ一映画少年スコセッシ監督の映画愛にあふれた作品になっている。


『ヒューゴの不思議な発明』の試写の後、学生たちの前に登場したスコセッシ。「ありがとう。ありがとう」と何度もお礼を言って、第一印象は人の良いオジサンといった感じである。学生たちも世界の巨匠を前にしてやや緊張気味の様子だ。生徒たちは皆こうして外国映画の監督に直接会うのは初めてだという。


スコセッシが「この中で、映画を撮ったことがある人は手をあげて」と質問すると、会場の半数近い生徒が手をあげた。続けて「それは短編かな? 長編を撮った人はいるかい?」と訊くと、全員が手をさげた。スコセッシは「みんなゆっくり手をさげちゃったね。皆さんの気持ち、わかりますよ」とにっこり笑顔。次から次へと言葉が湧き出てくるスコセッシの言葉に生徒たちは真剣に耳を傾けていた。


デジタルハリウッド大学に通う女子生徒は「将来は映画の世界に入りたいのですが、スコセッシ監督を超える映画監督になる法則を教えてください」と目をキラキラ輝かせて質問していた。スコセッシは軽く笑顔を送ると「僕は子供のころ、絵が動くことに夢中になって映画の世界にのめり込んでいった。大切なことは自分の持っている媒体へ情熱を持つことだ。どんな困難があってもその媒体を持って自己表現を続けること。夢を追ってクレイジーなほどそれにこだわりつづけることだ」と熱く語っていた。


同じくデジタルハリウッド大学に通う男子生徒が「想像力の源はなんでしょうか?」と訊くと、スコセッシは「子供のころ、僕は喘息でスポーツを禁じられて、大笑いすることも禁じられた。だから、僕は色々なことを観察するようになった。観察しているうちに次第にドラマティックなものに気づくようになった。そしてそれを映画で描いたら面白いだろうなと考えた。今でも映画を作っているときには子供の頃に感じた頭の中がスパークしたときの衝動に戻っている。そうやって興奮して喜んで映画を作っているんだ」と語った。この言葉は、まさに『ヒューゴの不思議な発明』に描かれているテーマそのものだと言える。初めてマジックショーを見たときの興奮や、初めてパラパラマンガを描いたときの高揚感、初めて機械仕掛けのオモチャを組み立てたときのあの衝撃である。


最後に、スコセッシは「映画というのは変わり続けている。これから僕にはわからない形態になっていくと思う。君たちならその形態も理解できる。新しい技術を駆使して新しい方法で映画を作っていくことになるだろう。皆さんに与えられている機会は、何か新しいことをすることです。僕たちは新しいことをしてきたので、今度は皆さんが新しいことを発明する番です」と日本の将来を担う映画監督の卵たちにメッセージを送ると、一夜限りの特別授業は幕を下ろした。


『ヒューゴの不思議な発明』は、映画の中に入っていくような、そういう没入感を感じさせる映画である。巨大な駅の奥行感と造形は何とも幻想的空間で、駅を縦横無尽に突き抜けるワンシーンワンカットのカメラワークは、これぞ3D映画の醍醐味といえるダイナミックな映像で、デジタル3D映画の先駆者ジェームズ・キャメロンが「大傑作!」と感嘆した作品である。映画が三度の飯よりも好きなあなたなら号泣必至だろう。3月1日(木)の「映画の日」から3D/2D同時公開。(澤田英繁)

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2012/02/19 20:47

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