ルーニー・マーラ『ドラゴン・タトゥーの女』で初主演にしてアカデミー賞主演女優賞の候補に
去る1月31日(火)、六本木にて『ドラゴン・タトゥーの女』の記者会見が行われ、デヴィッド・フィンチャー監督と、本作で初主演にして本年度アカデミー賞主演女優賞にノミネートされたルーニー・マーラが登壇した。ルーニー・マーラはこれが初来日となった。
演技というものは、自分とは違う人になること。会見を取材して筆者はそう思った。フィンチャーが描く新時代のダーク・ヒロインと言われているけれど、主演のルーニー・マーラちゃん、笑ったときに出るえくぼがとってもキュートで、色白で白の服がよく似合う。会見中はとにかくシャイで照れてばかり。言葉も少なく、なかなか正面を向いてくれなかった。『ソーシャル・ネットワーク』でマーク・ザッカーバーグの恋人役で出ていた彼女を見て、フィンチャー監督は自分の求めていた不屈の精神を彼女の瞳の奥に見てタイトルロールに抜擢したという。
全世界で6500万部を売り上げた大ヒットミステリー小説の映画化。原作がスウェーデンを舞台にしていることで、フィンチャー監督は舞台をアメリカに移さず、原作と違いを出そうとせずに、スウェーデンでダーク・ヒロインの性格を描出することにこだわった。「足したというよりも、排除していく作業でした。まるで砂金をふるいにかけて金だけを残すように、彼女の光り輝く部分を残すようにしたのです」と語るフィンチャー監督。タイトルシーンなど、監督ならではの映像美が冴え渡る。「抽象的でも滑稽でもいい。リスベットの悪を描くために体からいろんなもの、黒い漆のようなものがにじみ出てくるようなものを描きました」と胸を張っていた。
天才監督といわれているフィンチャーだが、意外にも本人は見た目も言うことも普通の人ぽくて、でもそこがいい。今回はレッド・ツェッペリンの『移民の歌』が使われているが、有名な曲を使うことについて記者から質問があると、フィンチャーは「今回はたまたまスウェーデンをロケハンしてるときにレッド・ツェッペリンのアルバムがかかっていたんです。馬鹿げてますが、ふとこの曲を女性が歌ったら面白いんじゃないかと閃きました。閃きですから理由を説明することはできないのですが・・・。今回は殺人のトーンを作り上げるためにエンヤも使ってますが、少なくともABBAよりは合ってるよね」と、案外フィンチャーは直感にも頼っていることがわかった。まあ、その直感の鋭さこそ天才といわれるゆえんなのであるが。無論『移民の歌』の効果は絶大である。
さて、今話題のルーニー・マーラちゃんだが、最近はファッション・アイコンとしても注目されている。これに関して本人はどう思っているのだろうか。聞けば「世間からそのように見られていることは考えないようにしています。自分なりの生き方を続けます」と、しっかり自分を持っている女優さんでした。アカデミー賞協会も認めたその演技、じっくりスクリーンで見ておきたい。
『ドラゴン・タトゥーの女』は、ソニー・ピクチャーズ配給で、2月10日(金)よりTOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショー。(澤田英繁)
2012/02/05 22:58