美しいアフリカを舞台に描く正統派ゾンビ・ホラー映画『ゾンビ大陸アフリカン』
『ゾンビ大陸アフリカン』。なんとなく見てみたら、ど偉い傑作だった。これだから映画はやめられない。この映画、前代未聞、アフリカを舞台にしたゾンビ映画である。
いや、ゾンビ映画といったらもう数えきれないほどあるけれど、これは久しぶりに見た正統派ゾンビだ。原点回帰といえる作品で、怖くて美しくて神々しくて、久しぶりに見入った。見終わった後、だいぶ気に入ったのか、もう一度リピートして立て続けに見てしまったほどだ。
最近のゾンビはワッと勢いよく遅いかかってくるものが多いが、本作のゾンビはとにかくのろのろ。少しずつ少しずつ近づいてくる恐怖というものがこんなにも怖いものだったのか。大勢に囲まれればいくらのろのろでもやられてしまう。
炎天下、灼熱の砂漠、広大な大地の上をのろのろとアフリカンゾンビが歩く映像がなんとも美しい。最初のシーンに登場する砂漠の真ん中を歩く片足が不自由なゾンビの映像など素晴らしすぎる。
面白いのは、主要登場人物が2人だけということだ。ホラー映画といったら、最初に10人くらいいた登場人物がストーリーが進むにつれて少しずつ殺されて減っていくというのが定石パターンであるが、本作には白人のアメリカ人と黒人のアフリカ人の2人だけしか登場しない。赤の他人同士だった2人が、このアフリカの広大な大地で、水も食糧もない中、協力しあってたくましく生きていく。この2人の友情は泣かせるものがある。
感心するのは、本当に真剣にイイモノを作っているということである。いや、そんなことはどの映画でも当たり前のことなのだが、これは派手なエンターテイメント路線に走るのではなく、ストイックなまでに大真面目にゾンビ映画の様式美を重んじて作っているように感じる。
筆者は最初はちょっとチャラい映画を想像していただけに、この様式の美しさには、思わず感動してしまった。アート映画を見ているような感覚もあり、「生命の賛歌」のようなものを感じる。とにかく最初にこれを見たときには、友達に見せたくてたまらなくなった。これを誰も知らないまま終わらせるのはもったいない。少しでも宣伝して広めていかなければ。本当に面白いから、ぜひご覧あれ。(澤田英繁)
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2012/01/22 23:15