スピルバーグが今までで最も時間をかけて作った新作『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』

タンタンの冒険
(C)2011 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

山田五郎、堀内葉子、白石康次郎

いよいよ『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』の公開日が近づいてきた。映画ファン待望の話題作である。あの名匠スティーヴン・スピルバーグの最新作であり、彼にとって初となる3DCGアニメ映画である。前作『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』から実に3年半ぶりとなる作品で、「早撮り」の異名を持つスピルバーグにしてはキャリア最長のブランク期間をおいて満を持しての完成となった。もちろんスピルバーグはこの3年半を休んでいたわけではない。生半可な気持ちで3DCGアニメの世界に入ったのではない。じっくりと時間をかけてその技術をモノにして行ったということである。ファンをひどく待たせてくれたものであるが、その点、これまでのスピルバーグの作品の中でも本作は最も芸が細かい映画になっている。

原作『タンタンの冒険』はベルギー生まれの漫画である。記者のタンタンがひょんなことからカリブ海やサハラ砂漠など世界中を股にして冒険する24巻のシリーズである。記者のタンタンには何の特殊能力もない。あるのは勇気と好奇心、そして行動力だけである。その気があれば誰にだって冒険者になれる資格があることを教えてくれるこの原作は、世界中の子供達から愛され続けている。

スピルバーグが、30年前、当時映画界長者の覇権を争っていたジョージ・ルーカスとまさかのタッグを組んで作り上げた『インディ・ジョーンズ』は空前の大ヒットを記録したが、当時『インディ・ジョーンズ』は『タンタンの冒険』のパクリだと指摘されたことがあった。スピルバーグはそう指摘されて初めて『タンタンの冒険』と出会い、一気にその世界にのめりこんでいったという。「いつかこれを僕の手で映画化してみせる」、スピルバーグがそう心に誓って30年。その夢がついにここに実現した。

かつてスピルバーグとルーカスが組んで『インディ・ジョーンズ』を作ったように、スピルバーグはこの作品を現在のヒットメーカー、ピーター・ジャクソンと組んで作り上げた。ピーター・ジャクソンは『ロード・オブ・ザ・リング』を製作した天才プロデューサーである。それと、脚本を書いたエドガー・ライトの存在も忘れてはならない。エドガー・ライトは『ホットファズ』他イギリスで圧倒的人気を誇るコメディ作家である。本作のキャスト陣は、スピルバーグ、ジャクソン、ライトそれぞれにゆかりのあるイギリスの俳優たちが集まって形成されており、内容もスピルバーグ、ジャクソン、ライトならではの「それらしさ」が感じられるものになっている。映画ファンなら1本で3人分の映画を見た気分になるだろう。

『インディ・ジョーンズ』がかつて『タンタンの冒険』のパクリと思われたように、なるほど、『タンタンの冒険』は、「もしも『インディ・ジョーンズ』が子供向けのアニメになったらこうなっていただろう」というような内容である。アニメならではの見た目にコミカルなギャグをここまで贅沢にお金をかけて描いた作品はなかっただろう。ライバルはジェームズ・キャメロンの『アバター』であり、ジャクソンはそれを超える3D体験を目指して街全体を細部のいたるところまでCGで組み立てて描きあげている。圧巻はタンタンがバイクに乗って街を駆け抜ける追っかけアクションだ。「3DCGアニメもここまで来たか」というような渾身のシーケンスになっている。ジャクソン率いるCG制作スタジオWETAの質の高さに驚かされるばかりだ。

日本のリアルタンタン 山田五郎が試写会に登場

去る11月12日(土)、朝日新聞の「Look up Japan」プロジェクト(震災で両親を亡くした子どもたちのための応援金を募っている)の一環で行われたチャリティーイベント「タンタンで日本を元気にしよう!」では、『タンタンの冒険』の試写上映が行われ、髪型がタンタンにそっくりな有名人・山田五郎(52)、タンタンばりの海洋冒険家・白石康次郎(44)、そして映画通としても知られるモデルの堀内葉子(29)がたっぷりと『タンタンの冒険』の魅力を語った。

白石は「水の描写がすごい。今までいろんな映画を見たけど、この映画の海が一番本物みたいでした」とそのCGを絶賛。山田は「日本では押したらコンピュータがスペック的に止まってしまう押しちゃいけないボタンがあるそうで、この映画ではそのボタンを連打してるそうですよ。人間の押しちゃいけないボタンまで押しちゃったみたいです」と解説していた。堀内は「タンタンのように冒険心みなぎっている男性には惹かれます」と話していたが、山田は「女性はみんなそういうけど、実際に男性が冒険なんかしたら女性は怒りますよ」と否定して笑わせていた。(文・澤田英繁)

タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』は、12月1日(木)より、TOHO シネマズ スカラ座ほか全国拡大ロードショー。

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2011/11/14 0:17

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