『くまのプーさん』子供心を忘れていない大人のために

『くまのプーさん』
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相武紗季

今年のディズニーの手描きアニメーションの新作は『くまのプーさん』である。1977年にも長編映画が公開されているが、今回の新作は見た目は昔のまんまでも77年の旧作のリバイバルではなく、新たに製作されたまったくオリジナルの新作である。今年はディズニーの生誕110周年記念でもあり、ルーツに戻るということで、名作『プーさん』にとっては実に34年ぶりの新作登場となる。

プーさんは、テレビ番組の企画などで、アニメーションキャラクターの人気投票を行うと必ず上位にランクインされるキャラクターである。筆者の部屋にもプーさんのぬいぐるみがあり、たまに癒されるが、意外にもプーさんがどういう性格なのか知られていない。ぬいぐるみとして親しまれているけれど、映画を見たことがないという人は多いはずだ。そういう人たちにとっては初めてのプーさん体験ができそうだ。

ストーリーは、無邪気なものである。クリストファー・ロビン少年が「スグモドル」という書き置きを残してどこかへ行ってしまう。この書き置きを見た100エーカーの森の仲間たちが「スグモドル」という怪物にさらわれたのだと勘違いし、救出劇を繰り広げるというものだ。プーさんはクリストファー・ロビン少年がいなくなっても頭の中はハチミツのことばかり。ティガーは張り切り過ぎ。ピグレットはびくびくしてばかり。イーヨーは何事にも悲観的だ。みんな性格がはっきりしていてわかりやすい。

とてもお気楽な作品だけれど、子供向けの映画だと思って大人目線で見るのではなく、子供心を思い出して見て欲しい作品だ。この映画を見ている間は、誰しも子供に帰ることができるであろう。

「私は、子供たちに向けて映画を作ってるわけではない。人々の中にある子供心に向けて作っているのです」

これはウォルト・ディズニーの言葉である。筆者は、15年ほど前に何かのドキュメンタリーでこの言葉を聞いたのだが、この言葉こそ、人が映画を見ることの意味を教えてくれる最高の名言だと思った。この言葉を聞いてからは、子供向けの映画を見ることも全く恥ずかしいと思わなくなったし、子供向けの映画を見てそれを楽しいと思える自分が好きになったものである。筆者はこの言葉が本当に大好きで、これまで時々あらゆるところでこの言葉を引用させてもらっている。未だこれを超える名言とは出会っていない。

今回、この新作『くまのプーさん』を見て、改めて、このディズニーの言葉を強く思い出した。ディズニーは1966年の『プーさん』の第一作の発表後に亡くなっており、ディズニーにとっては『プーさん』が生前最後に手がけた作品ということになる。その意味でも、ディズニー・スタジオはこの映画で、ディズニーが生きていた頃の、ディズニーの言葉の原点に帰ったのだと思う。この温もりも手描きでしか表せないものだ。この新作『くまのプーさん』は、子供たちと、子供心を忘れていない大人たちのための作品なのである。

なお、本作のイメージキャラクターとして日本の癒し系女優・相武紗季が選ばれている。パンにハチミツを塗って食べるのが好きというところもプーさんに通じているかな。某日、クリストファー・ロビンの格好を真似てPRイベントに登場した相武は「プーさんの魅力がいっぱい詰まっていて、見終わったあと気持ちが暖かくなる作品は久しぶりに見たなと思いました。ピグレットも気になる存在ですが、いつもドジをしてしまうプーさんが好きです。丸いフォルムが大好きなので、こてんと座ったり、おぼつかない足取りとか見てるとキューっとなります。どんな人が見ても暖かくて、癒しの要素がこんなにある映画は他にないので見て欲しいと思います」と話していた。相武の「100エーカーの森の仲間たちの家をひとつひとつ訪問したい」というコメントは、まさに作品の世界観の魅力を一言で表していた。

くまのプーさん』は、9月3日から全国公開される。(澤田英繁)

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2011/08/29 3:33

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