『龍が如く OF THE END』人気アクションゲームがゾンビゲームに

流が如く OF THE END

先日、『龍が如く』シリーズの最新作『龍が如く OF THE END』をクリアした。6年続いている人気シリーズが今年は何を思ったか突然ゾンビゲームに方向転換した。賛否あるが、筆者は良かったと思う。セガの意欲作を存分に堪能させてもらった。

『龍が如く』シリーズは、2005年に1作目が出た時からすでにセガの代表作といえるものだった。記念すべき1作目は、テレビゲームなのに本格的に極道の抗争を描いた画期的作品として大ヒットを記録。三池崇史によって実写映画化もされた。それから現在まで毎年1本のペースで新作を出して、いずれも大ヒットしている。

ストーリーも『1』から『4』までずっとひとつながりになっており(『龍が如く 見参!』を除く)、作品を重ねるごとに、登場人物の歴史的厚みが増して行った。1作目では幼い女の子だった「遥」も、作品を重ねるごとに成長して行って、『4』ではアイドルみたいに可愛くなっちゃって、1作目からずっとやってきた人にとっては非常に愛着があるキャラクターである。

どの作品にも必ず大きな売りがあった。『1』は大人ゲーマーをターゲットに歌舞伎町をモチーフにしたバーチャルな歓楽街「神室町」を作り上げたこと自体が大きな驚きであった(今では歌舞伎町に行くたびに「神室町」を思い出してしまうほど)。『2』ではその世界に大阪の舞台を加えた。『3』では沖縄が舞台になった。『4』では主人公が4人になり、より世界観が広がった。

ゾンビの街と化した神室町

そして『龍が如く OF THE END』。シリーズのお馴染みの「神室町」がゾンビの街と化す。今まではそのリアリズムが高く評価されていた作品だが、ここで突然ホラーものに方向転換し、これまで培ってきた世界を根本からぶっ壊すとは、あまりにも大胆すぎる発想である。映画でもテレビドラマでも、こんな企画が通ることはまず現実的に有り得ない話、許されることのない話なのだが、こういう無茶な企画を実際に形にしてしまったのだから驚く。そこはさすがセガというべきか。正直、寄り道要素がマンネリ化してきたなと思っていたので、この我が道を行くセガのチャレンジ精神には胸が熱くなった。それでこそセガだよ。

発表当初から賛否両論を巻き起こしていたが、当初のユーザーの予想では番外編的な内容になるのではないかという意見が多かった。蓋を開けてみると、1作目から続いているこの壮大なストーリーの続きとして、見事にストーリーがひとつながりにリンクしていたことに驚いた。もちろん、こういう無茶な企画でも、やると決まったからには本気でやっているので、まるでソンビの世界が当たり前であるかのように、はったりをきかせてこれまでのシリーズが構築した世界に自然に溶け込んでいる。1作目からやってきたユーザーにとっては、ゲームの中の歓楽街はバーチャルなもうひとつの現実のようなもの。その現実にゾンビが出てくることになるわけで、ゾンビ映画以上のリアリティを感じることができる。この没入感は快感ですらあり、ゾンビの街になっても逞しく店の営業を続けている「神室町」の世界観には惚れ惚れする。

ゲーセン店員もヘルメット着用で営業中

ゲームシステムとしては、これまではケンカアクションスタイルが貫かれていたが、今回はガンシューティングに徹している。街中をうろついていると敵に遭遇する従来のエンカウントの概念はなくなり、ストーリーの要所にミッションが設けられるスタイルが取られたことで、「いざ!」と戦闘に備える心の準備が十分できるようになった。逆に言えば、ミッション中はそこに用意されているアイテムだけで生き抜かなければならないというサバイバルのスリルが得られるようになった。また、ミッション性になったことで、Sランクを狙うモチベーションがやり込み要素を盛り上げてくれる。

今にも迫り来るゾンビを目前でやっつけたときの快感。弾切れになって弾を慌てて装填するスリル。そういった楽しさは基本的にゲーセンにあるようなガンシューティングゲームのそれと似ている。『ザ・ハウス・オブ・ザ・デッド』とかと違うところは、自分で移動しなければならないことだ。

銃の種類も豊富で、それぞれに特徴があって面白い。
ハンドガン系・・・最も基本的な武器。威力は弱いが、これさえあれば何とかなる。ある意味最もストイックな武器。
ショットガン系・・・周囲のゾンビをいっぺんにぶっ放してくれる武器。この破壊力がクセになる。
ガトリング系・・・物凄い勢いで弾を撃ちまくる武器。ゾンビを蜂の巣にしよう。見た目も派手だが弾切れには注意。
ライフル系・・・遠くの敵を狙い撃ちできる武器。一発に全神経を集中して引き金をひこう。命中すると思わず熱くなる。

アサルトライフルをぶっ放す

本作には4人の主人公が登場するが、それぞれのストーリーが熱い。基本的にはどのキャラクターも戦い方は同じなので、あえて4人に分けたのはストーリーを盛り上げる演出効果のためだと思われる。4人がスキルを共有しているところから安心してレベルアップに勤しめるが、キャラクターごとに武器を使い分けて遊ぶと気持ち的にも盛り上がる。筆者は『2』が最高傑作だと思っているので、『2』のボスキャラ「郷田龍司」が今回主役の一人として出てきたのは嬉しかった(こいつのストーリーがなかなか泣かせてくれる)。また、1作目からの主人公「桐生一馬」が出てきたときは、いかにも真打ち登場でございといった感じの演出で、これまたニヤリとさせてくれる。

『OF THE END』の面白さは、銃をぶっ放す爽快感の中にある。とにかくこれでもかとうじゃうじゃゾンビが出てきて、すごい勢いで襲いかかってくる。それを銃で迎え撃つスリルと爽快感。ゾンビ映画を見てハラハラしたシーンを、ゲームを通じて体験することができるのだから気持ちがいい。筆者はジョージ・A・ロメロ始めゾンビ映画の熱烈なファンなので、ゲームをやっていてもう嬉しくて嬉しくて。映画女優の栗山千明が出ていることもファンとしては嬉しかった。

逆に残念に思った点は、移動が作業的になってしまうこと。通常エリアと隔離エリアがあって、その行き来が面倒だったこと。サブストーリーを進めようと思うとここが苦になる。近くの場所にいくにも回り道が必要で、そのたびに大量のゾンビを倒していかなければならない。せっかくストーリーが面白いので、ストーリーの描写を重視して、移動は省略するなどしていただけたら、より爽快感も増したかと思う。

ところで、今回のタイトルはナンバリングされてないが、『龍が如く OF THE END』というタイトルをみると、これで終わりと思った人もいるかもしれない。結末も完結であることをほのめかしていた。これはどうなのかと、セガ広報に直接真相を問い合わせたところ、現時点では答えられないということだった。シリーズを『1』から手がけてきた名越プロデューサーの別タイトルの新作にも興味があるが、今回はこれで完結と断言していないことから、また近いうちに『龍が如く』シリーズの新作を遊べる日が来ると筆者は確信している。それに「遥」の成長もせめて成人になるまでは見届けたいしね。(文・澤田英繁)

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(C)SEGA

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2011/08/08 1:26

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