阪本順治監督。初の喜劇『大鹿村騒動記』の初日に張り切ってみる

佐藤浩市、阪本順治

7月16日(土)、有楽町にて、原田芳雄(71)主演作『大鹿村騒動記』の初日舞台挨拶が行われ、大楠道代(65)、岸部一徳(64)、佐藤浩市(50)、松たか子(34)、石橋蓮司(69)、阪本順治監督(52)が登壇した。

原田芳雄は、腸閉塞と肺炎を併発して現在加療中。それでも本人は舞台挨拶には必ず出席する気でいて、報道陣も原田を取材するつもりで来ていたのだが、残念ながら本人は欠席。映画館がバリアフリーになっておらず、階段が多いため車椅子で入場するのは難しいと開始直前になって判断されたのだ。

原田の登場を楽しみにしていた人も多かったので、がっかりしたファンも多かったようだが、阪本監督は「本人はやる気まんまんですから、今後の舞台挨拶には行くと言ってました。まだ自分でやりたい企画がいっぱいあると言ってまして、2月29日が芳雄さんの誕生日で、誕生日にはライブをやりたいと言ってました。自分の声がトム・ウェイツに似てることがわかったみたいで、トム・ウェイツのように歌いたいと言ってました」と挨拶、元気にやっていることを伝えていた。

『大鹿村騒動記』は、300年の伝統がある長野県大鹿村の大鹿歌舞伎を描いた喜劇映画。阪本監督と会うたびに「いつか正面から取っ組み合おう」と話していた原田が、企画を阪本監督に提案して製作がスタート。原田は過去20年間で阪本監督の作品に6作出演しており、ようやく互いの機が熟して、7作目にして初主演が叶った。阪本はこの映画を作るにあたり、フェデリコ・フェリーニのような世界観を意識したという。そうなると原田の立ち位置はマルチェロ・マストロヤンニか。原田は本作について以前のインタビューで「節目になった作品。僕の第三期がここから始まった」とコメントしていた。

大鹿村の村長は、本作の撮影に全面協力。作品の題名に村の名前がつけられたことで「光栄に思う」とこのハレの日に感謝の手紙を寄せていた。

また、石橋は「大鹿村というのは日本に二つありまして、ひとつは長野県の実際の大鹿村、もうひとつは映画の中に登場する大鹿村でございます。この村の精神的村長は原田芳雄でして、助役の阪本順治は大働きをしまして、この村もなんとなく素敵な村にできたんじゃないかと思います。村の男衆は夜ごと宴会であまり村の発展に役立てませんでしたけれど、歌舞伎の場面だけは実際の村の方々にお叱りを受けながら、一生懸命努めさせていただきました」とコメント。大鹿村で大鹿歌舞伎を演じられたことに誇りを見せていた。

初の喜劇ということで、阪本監督はなんとしても客席から笑いを取ってやろうと次々と取っておきのネタを披露した。

「先輩の俳優さんたちが一堂に集う場面があったんです。そのときについつぶやいてしまったんですね。『年寄りばっかりだな』って。そしたら『コラ!』って声がして、ふっと見たら、大楠さんがすぐそこにいて・・・スリルがありました」

「佐藤浩市君と瑛太君は僕と同じ旅館だったんですけど、旅館の人が『佐藤浩市だ!』と声をあげながら喜んで案内してくれたのに、『お布団は自分でひいてください』ですって」

「旅館の温泉に入ったらおじいさんたちがどどっと入ってきて、どうもこのシーズンは旅館にとまって紅葉を楽しむらしいですが、瑛太がおじいさんたちに『兄ちゃんどこから来たの?』と訊かれて『東京です』と答えて、『仕事、何してるの?』と訊かれて『いやいや、色々です』とごまかしてました」

しかし、客席からの笑い声は今ひとつだったようで、阪本監督は思わず「意外と面白くなかったですね」と寂しそうにしていた。

この日は、岸部も石橋もネタに走り、まるで誰が一番面白いことを言うのかを競い合っていたかのようだったが、こういう舞台挨拶で観客を笑わせることにかけては誰にも引けを取らない佐藤は、自分の出番が来ると我こそはとジョークを連発し、まんまと笑いを取っていた。「どうして宮崎駿作品に老人アニメがないんだろうな」と同日上映の競合他社作品をからかう一幕もあった。

佐藤が「軽々しく阪本監督に向けて、”あなたの嫌いな三谷幸喜が”といったのがそのままラジオで使われてました。カットされてなかったですね」と言うと観客は大笑い。阪本監督は「それ問題ですよ。嫌いじゃないですから」と慌てて誤解を解いていたが、佐藤は「だって、活字になるようなこと言ってくれと言ったじゃないですか! まあ、映画界は色々ありますから。僕はどちらとも仲が良いです」と更に笑いを誘っていた。挙げ句には阪本も「本当に喜劇と銘打った映画は初めてで、三谷さんとはまた違う喜劇を作ってみようかなと思いました。ぷっ」と吹きながらコメントしていた。

大鹿村騒動記』は東映配給で公開中。誰でも鑑賞料金1000円で見ることができる。(文・澤田英繁)

※追記 この記事を掲載した2日後に原田芳雄さんがお亡くなりになりました。ご冥福をお祈りいたします。

[PR] 戦国時代カードゲーム「秀吉軍団」好評発売中

2011/07/17 3:45

サイトのコンテンツをすべて楽しむためにはJavaScriptを有効にする必要があります。