『奇跡』大塚寧々の顔をアップで見たいのに・・・
6月11日(土)新宿で『奇跡』の初日舞台挨拶が行われ、前田航基(12)、前田旺志郎(10)、大塚寧々(42)、樹木希林(68)、是枝裕和監督(49)が登壇した。
今年の3月12日に九州新幹線が開通。この日は各駅でイベントを予定しており、盛大に盛り上がるはずだった。しかし、その前日にあの大惨事。イベントはすべて中止になった。九州新幹線について描いた『奇跡』もいわば記念イベントの一環として作られたものだったが、無事こうして初日を迎えることができた。
いつでも逃げられるようにとリュックを背負って登場した樹木希林は、日本がこのような状況のときに、このような映画を公開していいのかと顔を曇らせていたが、「まえだまえだ」の二人はそんな樹木をよそに大はしゃぎ。撮影時もこうだったようで、樹木が「あなたに演技指導しても、全然人の話しは聞いてなくて返事だけは良かったね」と撮影時の不満を蒸し返すも、旺志郎は「だって子供やから。騒がんとストレスたまるから」と笑い飛ばしていた。
航基は母親役の大塚について「UNOとかトランプしてすっごい優しいなと思いました。そう思ってたら家族4人でタコ焼きを食べてて喧嘩になるシーンでは、さっきまでにこやかにしてたのに、こんなに人間変われるのかとほんまにびっくりして、さっきまでのどこいってんねん思った」とコメント。本気で芝居にあたっていた大塚は「本当に怖がっているのがわかりました。お芝居だけど、本気で怒っているときの感情が伝わったようで、ごめんね」と謝っていた。
本作は、遊び、食べて、寝て、そんな子供たちの日々の姿、ただそれだけを見ているだけでも心に響くものがある。あくまで子供が主役ということで、大人たちはあまり映像に大きく登場しない。大塚寧々の素敵なアップの映像もじっくり見たいものだが、それがない。大人は子供たちの背景のように描かれている。
このことについて、樹木が「私のようなしつこい役者の場合、背景のようにサラッと描かれるのはちょうどいい。本木さんには目立ってなくて今までで一番出来が良いと褒められました。でも、他の役者さんは、アップのひとつでも撮ってあげればいいのに、あんなにサラッと描かれては、私がマネージャーだったら文句言ってます!」と是枝監督に結構きつめにダメ出しする一幕があった。是枝監督は一歩も譲らず「はい。それについては、映画としては、サラッとやっていただいた人がいるお陰で子供たちが輝いたと思っています。その辺りは見た方が判断していただけたらと思います」と笑顔で答え、自作に対する愛着心をのぞかせていた。
全シーンを九州で撮影したローカル色の強い本作。九州では一足早く先行公開しており、「まえだまえだ」の二人は鹿児島、熊本、福岡で舞台挨拶をハシゴするPR活動にも積極的に参加した。熊本だけでも3カ所で舞台挨拶しており、ここで”お笑いではない”レッドカーペットも経験した。
九州では評判も上々で、「まえだまえだ」は初主演にして初体験三昧と良いことづくしだが、この日さらなる吉報が届いた。なんとフランスやスペインなど、世界13カ国で公開が決まったのだ。旺志郎は「初めて聞きました。めっちゃ嬉しいです」とまた大はしゃぎ。是枝監督も素直に「嬉しいですね。火山灰が降る町、日本のローカルがどのくらいグローバルに伝わっていくか楽しみです」と喜び、「まえだまえだ」を父親のような目で見守っていた。
東京ではJR各駅、車内の中吊り広告、車内テレビなど、これでもかというくらい大きく宣伝しており、九州地方の口コミもネットでじわじわと広がって、今話題が話題を呼んでいるところ。今年は「まえだまえだ」イヤー到来の予感である。(文・澤田英繁)
2011/06/13 3:06