オリバー・ストーン監督がリーマンショックを機に再び立ち上がった
2度のアカデミー賞に輝く巨匠オリバー・ストーン監督(64)が、先日11月29日に『ウォール・ストリート』のPRのため急きょ来日、日比谷のペニンシュラホテルでミニ会見を行った。
このミニ会見は、普通の会見と何が違うのかというと、ウェブ媒体限定で行われた会見だったということである。記者の数も十数人程度と規模は小さめ。普通の会見は、むしろウェブ媒体は冷遇されていると言ってよく、役者の所属事務所の意向などにより場合によっては取材NGになることもしばしばあるほどだが、ストーン監督は珍しくウェブ媒体を何よりも大切にしている稀有な監督であった。なぜウェブ媒体だけにこだわっているのか私も質問したかったのだが、何しろストーンは語り出すと止まらない監督で、ひとつ質問するなら延々と話し続けるから、ほとんど一方的にストーン監督が話をする形で会見は終わった。しかしそういう熱心さこそ巨匠たるゆえんなのかと思わせた。しかし、フォトセッションではにっこり笑顔を見せるなど、案外と柔らかい一面があったのはちょっとした発見であった。
『ウォール・ストリート』は、マイケル・ダグラスに主演男優賞をもたらした経済ドラマ『ウォール街』の23年ぶりの続編。『ウォール街』はフィクションだが、ダグラスの演じたゴードン・ゲッコーは、今でも経済ニュースでその名を引用されるほどのキャラクターである。ストーン監督は「前作は1980年代で、金融業界では自由市場と言われ、金融緩和が始まったときだった。そして、2008年にリーマンショックで終わった。だからこのタイミングに作ろうと思った」と語っている。
ストーン監督は「この『ウォール街』と『ウォール・ストリート』の2つの作品は、本棚の初めと終わりという感じで、前の作品が春の花開くような若いチャーリー・シーンの成長を描いた話で、今回は年をとったゴードン・ゲッコーが人間としてのモラルを考えていく映画になっている」と続けた。「この作品を撮影する前にたくさんのリサーチをしたが、当時、銀行は巨大な資本を持っていて、100年間で新しい市場を作ったことが問題になり、社会に還元しなかったことが更に問題になった。また、銀行が罪悪感を持たず、国が救うか救わないかを決めてしまったことは驚くべきことだ。私はそこも作品の中で描いた。初の試みだったと思う」
今回は、シャイア・ラブーフとキャリー・マリガンがキャスティングされているが、2人の起用については、「私はこの映画を3世代に渡って描きたかった。シャイアとキャリーが新しい世代になる。2人は理想主義者なんだ。私はハングリーで理想主義的で、金儲けをしたいけれど、夢見がちな20代そこそこの若者をたくさん見てきた。まさに、シャイア、キャリーと重なるところがある。いかにも今らしい。2人はエネルギーに溢れていて、彼らと一緒に仕事ができて、とても楽しかった」と語っている。
ストーン監督の父が金融界の人間であることも、この作品には少なからず影響が出ていると言われている。現代のニューヨーク、ウォール街を舞台に、欲望の狭間で揺らめく人間たちの本質をスリリングにあぶり出した重厚なヒューマンドラマ『ウォール・ストリート』は、2月4日から公開。(取材・澤田英繁)
2010/12/13 0:53