外岡えりからアイドル豪華共演。自殺をテーマに大真面目に描く『リプレイガールズ』

『Re:Play-Girls リプレイガールズ』

先日、『リプレイガールズ』という映画を見た。傑作だった。可愛いアイドルたちが日本刀を持ってかっこよくポーズしているポスターからくるイメージと実際に映画を見た印象があまりにも違いすぎて、「こういう映画だったのね」という意外さと、物凄くズシリとのしかかるヘヴィなメッセージ性に驚いた。映画を見終わった後、何かボディブローを食らったような気分になったので、僕はいろいろな人にこの映画を薦めた。低予算の映画ではあるが、安っぽい映画ではなく、予算内でできる限りのことをやってあった。音楽にも主題歌にも妥協はなく、作り手側のクリエーターとしての顔を意識させる映画になっていた。

監督・脚本のYuki Saitoは将来有望な明日の映画作家である。後に巨匠となった映画監督の第一作を振り返ってみると、どの監督も最初の一本はこういうものである。初日の客入りは僕が見た感じ、正直なところ、あまり芳しいものとは言えなかったが、これをこのまま地味なまま終わらせるのはちょっともったいない。せっかく内容がいいのだから、もっと広く色々な映画ファンに見てもらいたいと思っている。

この映画のテーマは「自殺」。自殺を描いた映画はごまんとあるが、自殺だけで一本の映画を作ったのは見たことがない。最初のタイトルクレジットに漂う空気が何ともリアルで重たい。もうしょっぱなから鑑賞前のイメージは一切吹っ飛んだ。インターネットの自殺サイトの書き込みというのも、すごく今日的である。学校のいじめという、鬱なムードが延々と続いていくのだが、死ぬことを望んていた彼女たちは、やがて生きるために必死で戦う。後半はテレビゲーム感覚の内容である。

Saitoはもともとハリウッドを拠点に活動しており、マーケットとしても海外指向だった。これまでSaitoはショートショートで賞に選ばれるなど、高い評価をあげているが、ここに来て日本国内から世界を目指すことを選んだ。Saitoは海外で日本の印象を聞いたところ、もっとも商品力があったのは、アニメ、ゲームだったという。日本のいわゆる萌え文化は世界的にも評判が良く、日本のセーラー服ファッションも海外では「カワイイ」ともてはやされているというが、Saitoはこの日本の誇る文化を武器に、メッセージ性の高い自殺の映画を作り上げたわけだ。映画を見るまでは、監督のただの趣味かおふざけかと思っていたが、実際は全然違っていて、コメディーの要素は皆無に等しい。萌え文化という食材を選びつつ、全く別の料理を作ろうと努力している様子が伝わって来た。「テーマがテーマだけに、作るからには責任が伴う」とは監督の言葉。テーマを真摯に受けて映画を真面目に本気で作りあげた。

外岡えりか(19)、佐藤さくら(19)、佐武宇綺(18)、小泉麻耶(22)。グラビアも得意なアイドルたち。ガールズ度満載で、みんなとにかくカワイイ。そういえばハリウッド映画を見ても彼女たちのような役者は見たことがない。僕も外岡えりかのキラキラ輝く瞳を見て、日本のアイドルは唯一無二だと再確認させられた。これぞ日本の貴重な萌え文化。音声は後録りしていると思われるが、声が舞台裏から聞こえてくるような映像感覚は、まるで日本のアニメを見ているような気分である。

ハリウッドで映画を学んだSaitoは、日本に帰ってもハリウッド式の作り方を徹底した。例えば、日本では監督が主導権を握って編集を進めていくが、ハリウッドでは監督は一切編集に指示を出さない。こう聞くと日本式の方がよさそうな気がしてくるが、ハリウッド式のメリットは、専門のエディターが脚本だけを頼りに編集をすることで監督は客観的に作品に向き合うことができることである。ハリウッド式の作り方がいかに効率的なものか、この映画を見るとよくわかるだろう。

外岡は初日舞台挨拶で「最初にどんな映画かと聞いたら自殺の映画と言われて驚きました。でも出させていただけるならやりたいですといって引き受けました」と出演の経緯について語っていた。「戸惑ったし、やってみたいけど、不安な部分がありました。テーマが大きい分、伝わるメッセージも強いと思うので」と作品のテーマも真面目に受け止めていたようだ。

Saitoは「彼女たちは、常日頃からライブとかコンサートでファンに勇気とエネルギーを与えてるんです」と語っていたが、そう語るSaitoはアイドルに対してある種の尊敬の念を抱いているようだった。愛くるしいアイドルたちが血まみれになって命がけで戦うところが、この映画の最大の見どころといえるだろう。映画が伝えているメッセージはとてもポジティブなもの。「これを見てポジティブなエネルギーを受け取ってもらえれば」とSaitoは願っている。

リプレイガールズ』は、現在シネマート六本木ほかで順次公開中。(文・澤田英繁)

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2010/10/03 1:47

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