ハン・ヘジン『済衆院』韓国初の西洋式病院を描く
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たまには韓国ドラマでも見てみようと思い、『済衆院/チェジュンウォン』というドラマを借りてみた。実はそれほど期待もしていなかったのだが、これが予想以上に面白くて第1話からのめりこんで、気がつけばぶっ通しで一気に6話6時間強をまとめて見ていた。今では続きが気になって仕方がないドラマである。
『済衆院』は、一言で言えば韓国初の西洋式病院を背景にした時代劇だ。高宗朝鮮皇帝や西洋医学を宣教したアレン医師など歴史上の人物も登場する。韓国ではCMを入れて1時間半の枠で放送されていたのだろうかDVDの1話は65分という濃厚さだ。ストーリーは続き物であり、毎回必ず新たな展開が起きるため1話たりとも見逃せない。医療ドラマでありながら、サスペンスの要素もあって、早く続きが見たくて我慢できなくなるハリウッド・ドラマさながらの中毒性も備えている。全18巻36話あり、現在は3巻6話までリリース中。10月20日のリリース分で完結する。映画にはないテレビドラマの利点は作品の長さ。『済衆院』はまさにその利点を生かした壮大なる大河ドラマになっている。
西洋医学、時代劇といったら、日本のドラマにも『JIN-仁-』があった。描いている時代も近く、その時代の人々が西洋医学を目の当たりにして驚くあたりも共通している。その点から『済衆院』は韓国版『JIN』とも評価されている(実際は全然違うが)。主演女優のハン・ヘジンの話では韓国にはこの時代を描いた作品は他になかったという。確かに言われてみれば、明治維新の頃の韓国がどんな時代だったかと聞かれても日本人には想像ができなかった。このドラマは韓国の歴史をじっくりと描いているので、当時の韓国の文化を知ることができる。その点では『JIN』にも似た歴史の面白さが詰まった作品だと言える。当時の日本についても韓国側の視点でよく描かれている(出てくる日本人がことごとくトホホな役どころだが)。当時、文字は全て漢字で書かれていて、まだハングル文字が書記手段として認められていなかったことなど、歴史に疎いとそんなことにも驚きがある。というか、本当ならば一般常識として知っておかなければいけないこと。これは韓国史の入門編としてもオススメである。
『済衆院』で最も印象的なのは身分制度の描写だ。この物語の主人公は朝鮮社会の最下級とされる白丁(牛を刃物で解体したり、革靴を縫ったりする職業)である。この男の波瀾万丈の人生が主軸となるが、病気の母親を救えなかったり、涙なしには見られないシーンも多い。この男が、西洋医学を目の当たりにして胸を打たれ、医師になることを決意するあたりからストーリーは俄然面白くなってくる。このドラマが面白いのは、落ちこぼれが立ち上がり、成功をつかんでいく過程にある。人間誰しも劣等感はもっている。だからこそ感情移入もしやすく、弱者が勝つ話が気持ちいいのである。
今年6月、このドラマのPRで主演女優のハン・ヘジン(28)が来日した。お隣の国とはいっても、海外ドラマのPRで海外スターが来日するのはかなり異例ではないか。ワーナーはそれだけ宣伝に力を入れられるほど作品の質に自信を持っているということだろう。
間近で見てもドラマと変わらないすべすべのお肌が眩しかったハン・ヘジン。日本語で「こんばんは。ハン・ヘジンです。よろしくお願いします」と挨拶すると、本作の見どころについて、「女性たちが夢を持つことができなかった時代で、ドラマの中で私が夢を広げて行こうと思い、昔の女性たちの慰めになればと思った」と語った。この激動の時代、色々な抑圧を受けた中で、ハン・ヘジンは韓国で最初の女医となる人物を演じている。最初の3巻では韓国初の西洋医院ができるまでが描かれるが、これ以降からラブ・ストーリーの要素も出てくることを期待させた。ハン・ヘジンは劇中の恋愛について、「今の女性の感覚で演じようと思いました」と撮影を振り返っていた。(文・澤田英繁)
『済衆院/チェジュンウォン』は8月4日からDVDリリース&レンタル開始。9月8日にコレクターズ・ボックス1が発売。(発売・販売元:ワーナー・ホーム・ビデオ/提供:ショウゲート)
2010/08/09 1:07