ジェーン・カンピオン『ブライト・スター』は映像を読む映画

豊田エリー

『ピアノ・レッスン』のジェーン・カンピオンがメガホンを取った最新作『ブライト・スター〜いちばん美しい恋の詩(うた)〜』を見た。世界で最も美しい詩を生み出したと言われる英国の詩人ジョン・キーツとその恋人ファニー・ブローンの半生を描いた伝記映画であるが、筆者は実話だとは思わずにフィクションと思って鑑賞したので、ラストのテロップで実話だと知り驚いた。最後のエンドロールのところではジョン・キーツの詩が延々と朗読されるが、普段詩を嗜まない筆者にとってはそれは新鮮な体験であった。

去る6月3日(木)、豊田エリー(21)が本作のPRイベントに出席。この映画の中に出てくるキーツの手紙を朗読した。豊田さんがゲストに呼ばれた理由は、ファニー・ブローンと同世代であり、夫・柳楽優弥(20)と熱愛中で、それが映画の中のジョン・キーツとファニー・ブローンの愛に重なるからである。豊田さんは「詩というものは、言葉で説明できなくて感じるもの」と話していて、筆者も映画を見てそうだと思った。この映画もストーリーを追いかけるよりも、むしろその場その場の雰囲気を感じ取るべき映画なのかもしれない。

感心したのは、豊田さんの鑑賞眼のするどさ。筆者が映画を見て思ったことのすべてを豊田さんが言葉にして話してくれたので、後でテレコで聞き直してみて、うんうんと納得させられるばかりであった。豊田さんは「いっそ僕らが夏の3日間を生きる蝶なら平凡な50年を生きるより深い喜びを得られるのに」と語るシーンに最も引き込まれたという。

「映像が本当に綺麗で、普段絵画を見るのも好きで、この映画もミレーとかフェルメールとかそういう柔らかい絵を眺めている気分になりました。とくにファニーが出窓に座ってる場面があるんですけど、そこは光と影が綺麗でそのまま切り取ってしまいたいような好きな場面です」と話していたけど、筆者もこの映画を見ていて、その映像はまるでフェルメールの絵画が動いているような気分であった。

さらに「どこをとってもうっとりさせる作品。セリフのひとつひとつも美しいので何一つ聞き逃したくないという気持ちになって、映画を読んでいるような感覚で体に入ってきました」と、ほめ方がうまい。映画記者として、ここまで言われたらもうウチの立場がないというくらい見事なコメントである。

この映画ではファニーとキーツの手紙のやりとりが重要なファクターになっているが、豊田さんは「ちょっと離れるとこの世の終わりみたいなところに共感しました。旦那が仕事で長期間離れてしまうときに毎日読む分の手紙をくれて、毎日楽しみに読んでいました。20通くらいあって、毎日違うことが書いてあって、手紙もちゃんと手書きで暖かみがありました」と、お腹の中の赤ちゃんをなでながら夫にのろけていたが、プライベートな話題もきちんと映画の内容にからめていた。

豊田さんは「きっと素敵な場面に出会える」と話していたけど、本作の映像、色遣いは独特で、こういう時代ものならではの落ち着いた美しさがある。映像の一枚一枚に空気感が感じられるのは、さすが女流監督ジェーン・カンピオン監督。細かいところまで徹底して作っているなと思わせる。古色蒼然としたロマンスであり、好みはかなり別れると思うが、こういう映画が好きな人にはたまらないだろう。

ブライト・スター』は、6月5日(土)より、Bunkamura ル・シネマ、銀座テアトルシネマ、新宿武蔵野館他にてロードショー中。(文・澤田英繁)

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2010/06/14 3:01

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