骨太の脱走サスペンス『すべて彼女のために』ヒット祈願
フランス映画『すべて彼女のために』が話題になっている。僕も見せてもらったが、これが面白い。一言でいえば「脱走もの」。無実の罪で投獄された妻(売れっ子国際女優のダイアン・クルーガーが演じる)を救い出すため、夫は全てを投げ捨て、人生の全てを懸けて脱走計画を実行する。
ストーリーの構成力が絶妙で、家中の家具を全て売りさばいて金をかき集め、部屋の壁に沢山の写真を貼って周到なプランを練っていく様子は緊張感たっぷり。特筆すべきは、サスペンスの部分がしっかりと描かれていながら、ヒューマンドラマの部分、すなわち主人公が全てを捨てることを決意する様がドラマティックに描かれていることだ。泣いてはいけないのに、どうしても泣くことを我慢できないシーンがある。
口コミで順調にヒットしているようだが、これを受けて、去る3月3日(水)の雛祭、有楽町にて、夫婦円満にちなんで夫婦木神社の岩崎恒治神職によるヒット祈願イベントが行われた。映画館で祈祷するのは前代未聞のことではないだろうか。
アカデミー賞の常連であるポール・ハギス監督は、早速本作をリメイクすることを決定した。ハギスにとっては最初のリメイク作となる映画。リメイク作を見る前に、この本編を先に見ておくのもいいと思う。
『すべて彼女のために』は、ブロードメディア・スタジオの配給で、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開中。(文・澤田英繁)
2010/03/08 7:05