『ウルフマン』デル・トロが特殊メイクでワイルドに魅せる
ベニチオ・デル・トロ(43)が製作・主演の映画『ウルフマン』のキャンペーンで来日。3月3日(水)、ザ・ペニンシュラ東京にて記者会見を行った。
『ウルフマン』は、1941年に製作された名作『狼男』のリメイク作品。かつては「ユニバーサルホラー」という言葉があったほどで、30年代から40年代にかけてユニバーサルは『フランケンシュタイン』、『魔人ドラキュラ』など、ホラーの古典と呼ばれる作品を次々と製作。ボリス・カーロフ、ベラ・ルゴシ、ロン・チェイニー、クロード・レインズといったホラー映画のスターも誕生した。デル・トロは昔から「ユニバーサル・ホラー」の大ファンで今回の製作に至ったという。それも今時のやり方ではなく、その当時のやり方で作りたいというのが彼の熱い思いであった。
ドラキュラとフランケンシュタインはフランシス・フォード・コッポラがリメイクを果たしていたが、いわゆる三大古典ホラーの中では、まだ狼男だけが70年もの間、一度もリメイクされていなかった。デル・トロは、記憶では子供の頃に一番最初に本気で映画に惚れ込んだ作品は『狼男』だといい、自分の原点といえる映画を自ら製作した形になる。
かつて『狼男』では、ロン・チェイニーJr.が主演し、ジャック・ピアースの見事なメイクアップで世間の度胆を抜いた。デル・トロは特殊メイクを『狼男アメリカン』のリック・ベイカーに依頼し、CG全盛のこの時代に、あえて特殊メイクで真っ向勝負に出た。CGは変身過程の描写の補足で使うにとどめた。デル・トロは「往年のチェイニー&ピアースの名コンビのようなものを、デル・トロ&ベイカーで再現し、オマージュを捧げたかった」と語っている。毎朝メイクするのに4時間もかかっていたそうで「毎朝メイクをしているときはベイカーのことが大好きなのに、仕事を終えて皆が帰った後、メイクを2時間かけて落としているときは毎晩ベイカーのことが憎たらしくなってくるんだ」とも話している。
デル・トロは熱烈なラブコールでアンソニー・ホプキンスを父親役にオファーした。『ドラキュラ』ではヴァン・ヘルシングを演じた俳優である。以前より一緒に仕事をすることが夢だったといい、自ら作品をプロデュースすることでその夢を実現させた。デル・トロは「最前列で野球を観戦しているような気分だった」と振り返っている。
実は本作は当初はマーク・ロマネクが監督していたがスタジオと馬が合わずに降板し、現在のジョー・ジョンストンで落ち着いた。この点については「ロマネク監督は心理的な映画を撮ろうとしていた。変身する以前から怒りを表現している感じだった。ジョンストン監督に交替してからは主人公の描写もよりシンプルでノーブルな感じになって、これはいけるなと思った」と話している。
デル・トロは意外にもお茶目で、「どういうところでオリジナルと違いを出そうと思いましたか?」という質問に「カラーにしようと思ったね」と答えるなど、記者から質問があるたびに必ずジョークで答えていたのが印象的である。「どうしてそんなにセクシーなのですか?」と質問されたときは「その質問をされるとナーバスになっちゃうね。これは生まれつきだから両親に感謝するよ」ともじもじし、場内の笑いを誘っていた。
『ウルフマン』は4月23日(金)、東宝東和の配給で、TOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショー。
2010/03/08 7:35