北朝鮮の現実を描いた問題作『クロッシング』

キム・テギュン監督

1月29日(金)、韓国文化院にて、『クロッシング』の特別試写会が行われ、上映後の記者会見に、キム・テギュン監督と北朝鮮難民救済基金・理事長、加藤博氏、韓国在住の脱北者キム・ジョングム氏らが出席した。

『クロッシング』は脱北者について描いた社会派映画。朝鮮半島は世界唯一の分断国家であり、韓国にとって北朝鮮は「最も近くて最も遠い国」と言われてきた国で、描きたくても描かれない現状があったが、そこにキム・テギュン監督はあえて挑み、北朝鮮の現実を浮き彫りにしてみせた。世界中で絶賛され、日本でも東京国際映画祭で注目を浴び、それから2年もの間、公開が切望されていた作品である。

監督は「私も最初は北朝鮮のことを何も知らなかったのですが、この映画を監督することになって、自分が北朝鮮の現実を知らなすぎたことを恥じました。そして自分が描かなければならないという使命感にかられたのです」と話した。

映画製作は秘密裏に行われたが、この理由について監督は「北朝鮮を刺激する映画を作っていることを知られるのは危険なことでした。製作していることが知られて、政治的に利用されたり、ぶち壊されることを避ける必要があったのです」と語っている。

映画は韓国・中国・モンゴルで撮影されており、北朝鮮の文化描写・言葉のニュアンスなどは、スタッフの多くが助監督含め実際に脱北者だったことから補うことができた。子供の頃、北朝鮮で飢えに苦しみ、親を亡くし、脱北者となったキム・ジョングム氏は、「食べ物を盗んで殴り殺された人を目の前で見ました。私にはもう逃げるしか道はなかったのです」と語り、映画で描かれた現実の悲惨さが嘘ではないことを裏付けた。

ただ可哀相という言葉しか出て来ないほど、その内容には衝撃を受ける。しかしこの作品に描かれていることは、本当に起こっていることである。我々はその現実をあまりにも知らなすぎたのではないだろうか。涙なしには見られないこの悲劇のドラマ『クロッシング』は、太秦の配給で、2010年4月17日よりユーロスペースにて公開される。(レポート:澤田英繁)

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2010/02/01 16:12

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