『アバター』ジェームズ・キャメロン監督、『ナウシカ』の影響を示唆
『タイタニック』のジェームズ・キャメロン監督(55)が12年ぶりに贈る感動のドラマ『アバター』がいよいよ封切られた。これまで製作費の高さなどで毎回世界記録を更新し、興行収入などでも数々の記録を破って来たキャメロン監督が、構想に14年、製作に4年をかけたというまさに入魂の力作である。
いったいこれまでキャメロンは何をしてきたのかというと、3D映画の世界にどっぷりと浸かっていた。実は『タイタニック』の後にも3Dのドキュメンタリー映画などを撮って3D映画発展に技術開発にも貢献、3D映画の革命と評価されたこともあったが、キャメロンの次なる目標は、それまで短編が常識だった3D映画を2時間を超える長編ドラマとして描くことだった。これに便乗して、他の映画会社も3D映画を続々と発表。あのロバート・ゼメキスも3作の3D映画を発表した。完璧主義者として知られるキャメロン監督は、一番最初に手をつけていながら、一番後発となってしまったが、3D映画ブームの火付け役は元を辿ればキャメロンだったのだ。
そして、本家キャメロンが手掛ける大本命3D映画『アバター』がついにこの目で見ることができるようになった。日本以外の国では一・二週間ほど早く公開されていたが、いずれの国もナンバー1の大ヒット。満を持しての日本公開となったが、キャメロンが日本を一番最後の場所に選んだ理由は、『タイタニック』の日本での興行成績がアメリカに次いで2番目に良かったからで、今回はその縁起を担いだのだという。
編集部が12月中ごろに宣伝担当者にこの映画について問い合わせたところ、「まだ編集中です」との返答があった。実はこの映画、文字どおり出来立てのほやほや。キャメロンは世界公開する直前まで編集作業を行っていたというから驚きである。10月の東京国際映画祭では、PRのため出演者のサム・ワーシントン、シガーニー・ウィーバー、ゾーイ・サルダナが来日。キャメロンは欠席だったが、そのときから編集作業で多忙だったというわけだ。我々も「本当にできるのか」とやきもきしたものである。
先日六本木ヒルズで行われたジャパンプレミアにはイベントスペースから溢れるほどのマスコミが集まり、さすがに異様な盛り上がりを見せた。プロデューサーのジョン・ランドーの他、WOWOWで放送されるアカデミー賞とグラミー賞の今年度授賞式の案内役にも就任が決定している滝川クリステル(32)ら日本人著名人ゲストも多数訪れていたが(その様子はフォトギャラリーで見てもらうとして)、編集部を驚かせたのは、ゲストの大半が3D映画を見るのがこれが初体験だということだ。今年は3D元年といわれ、3D映画が何本公開されたかわからないのに、まだこれを体験している人が意外に少なかった事実に驚いた。観客の多くは『アバター』で初めて3Dを体験するようだが、その点からも、『アバター』は3D元年を代表する歴史的一本になるのではないかと思った。
筆者は川崎のIMAXシアターでこれを体験したが、まるで本当に惑星パンドラに来たような気分になった。3D映像の奥行き感にはただただ驚くばかり。「観るのではない。そこにいるのだ。」というキャッチコピー、その通りの映画である。『アバター』のタイトルの意味は自分の化身のことだが、映画を見ていると自分も主人公のアバターになったような気分になり、その美しい世界に陶酔させられた。
キャメロン監督が短い舞台挨拶の中で「僕は宮崎駿の大ファンだから」と語っていたのが興味深い。映画を見ると『風の谷のナウシカ』や『もののけ姫』の影響が感じられるが、本人もこれについては否定していないようだ。『ナウシカ』を彷彿とさせる蛍光色に輝く神秘的な世界が、今3Dの実写映像で拝めるとすれば、これは映画史においてまさに革命であろう。今後もキャメロン監督は3D映画だけを作っていくことを約束している。3D元年の夜明けとなる本作。ぜひ自分の目で見ていただきたい。
追記:『アバター』は日本でも公開されるや『タイタニック』の倍以上のペースで1位を獲得。現在も順調に記録を伸ばしている。(文・写真:澤田英繁)
2009/12/28 20:35